<< 一覧に戻る

膵癌・胆道癌 診断・治療Q&A

Q1. 膵がんドックのノウハウについて教えてください

古川正幸

膵・胆道癌FRONTIER Vol.7 No.1, 35-36, 2018

「がんの統計 '15 地域がん登録における5年生存率(2003~2005年診断例)」によれば,膵臓がんの5年相対生存率はわずか7.0%でワースト1位である。ワースト2位は,胆嚢・胆管がんの21.1%,3位は肝臓がんの27.9%である1)
当院は九州で唯一のがん専門病院であり,当診療科の専門は肝胆膵であり,難治がんの早期発見に向けた取り組みを行う使命があった。そこで,特に早期診断が困難な膵がんに特化したドックを企画することとなったが,腹部超音波検査と腫瘍マーカーを用いての膵がん検診ではがんの検出力は低く,費用対効果の面から問題があった2)
膵実質の描出に優れた造影CTと,胆・膵管の描出に優れたMRCPとを組み合わせて行うという,通常精密検査として行う検査を組み合わせ,検出力の向上に努めた。コスト上昇を避けるため,ターゲットは肝胆膵のみに限定し,通常のがんドックとは一線を画した。費用は,ほぼ実費相当額に抑え,受診者の経済的負担軽減に努めた。造影剤を使用するため,検査後の腎毒性が懸念され,申込時に事前に行われた他院等での検診やドックにおける腎機能検査データの提出を義務付けた。
ドックは自費診療であり,MRCP検査枠の確保など,開始に向けて解決すべき問題も多く,当診療科を中心に,がん相談支援センター,画像診断部,医事課などとミーティングを重ね,準備には半年以上の月日を要した。
過去にもハイリスクな症例に対し膵の精密検査が行われたスタディは存在するが,進行がんばかりが見つかり,早期診断に至ったものはなく,開始にあたり不安材料は少なくなかった3)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る