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期待される最新研究

膵臓がんのバイオマーカーの実状

谷内田真一

膵・胆道癌FRONTIER Vol.6 No.2, 38-42, 2017

言うまでもなく膵臓がんは難治がんである。しかし我々は,献体された膵臓がん患者の解剖サンプルを用いてシーケンス解析を行ったところ,がん細胞は突然変異を繰り返しながら進化を遂げ,最終的に転移能を獲得することを最新の分子遺伝学的なテクノロジーを用いて証明してきた1)。つまり,膵臓がんの病巣ではさまざまな個性のあるクローン(均一な遺伝情報を持つ細胞集団)ができ,低酸素などの厳しい環境下で適応能力がある強いクローンのみが,生存し増殖していくという,いわゆる“ダーウィン的進化”を遂げることがわかってきた。さらに膵臓がんの突然変異の頻度を数理解析することで,膵臓がんの自然史を推測したところ,正常の細胞に最初の遺伝子異常(多くはKRAS変異)が起きてから転移能を獲得するまでには10~20年以上かかり,膵臓がんは決して早期発見できないがんではないことがわかってきた2)。臨床実地で我々が診ている膵臓がんは,長い時間経過の中で最後の2~3年間の分子遺伝学的に完成した膵臓がんである3)。したがって,膵臓がんを早期に診断可能なバイオマーカーの開発が急務である。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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