座談会(Round Table Discussion)
変形性膝関節症の痛みと薬物療法の実際
Locomotive Pain Frontier Vol.2 No.2, 5-12, 2013
変形性膝関節症は,整形外科医にとって頻繁に遭遇する疾患の1つであり,その治療法は保存的治療から外科的治療まで多岐にわたるものの,近年は薬物療法の進歩もあって保存的治療が基本となっている。一方,臨床症状で最も頻度の高いのは疼痛であり,特に疼痛を原因とするADLの低下や移動性の低下による廃用性の問題から,疼痛の緩和が治療の重要な目的となる。そこで今回は,保存的療法に焦点を絞り,変形性膝関節症の痛みの原因と評価法ならびに薬物療法の実際について座談会を行った。薬物療法については,汎用されている非ステロイド性消炎鎮痛薬よりも,ヒアルロン酸関節内注射および近年注目されているオピオイド製剤を中心に討議した。
(2013年5月25日収録)
西田圭一郎 (司会)
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学 准教授
石島 旨章
順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学 准教授
岡崎 賢
九州大学大学院医学研究院整形外科学教室 講師
森田 充浩
藤田保健衛生大学整形外科 准教授
変形性膝関節症の痛みの原因と評価
西田 今回は,膝の変形性関節症(osteoarthritis;OA)に焦点を絞り,「変形性膝関節症の痛みと薬物療法の実際」というテーマで座談会を行います。まず,変形性膝関節症(以下,膝OA)の痛みの原因について,岡崎先生に簡潔にご説明いただきます。
岡崎 膝OAは,早期と末期では病態が大きく異なってきます。早期においては発症要因に半月板損傷が関与していることも多く,内側半月板の後節や後角損傷の頻度が高いように感じます。この場合,痛みの原因として半月板由来のものが含まれるでしょう。やがて軟骨の変性・構造破壊が生じますと,軟骨分解産物に反応して滑膜や軟骨より炎症性サイトカインが産生され,二次性の滑膜炎が生じます。これも痛みの原因の1つとして考えられます。さらに進行しますと,軟骨が減ってできたスペースの分だけインスタビリティ(不安定性)の問題が起こってきますし,場合によっては外側靱帯の弛緩性も生じてきます。
実臨床ではよく「軟骨がすり減っているから痛いのですよ」と説明されることがありますが,軟骨自体には神経はなく軟骨がすり減って痛みが起こるわけではありません。実際は副次的に痛みを起こす何かがあるはずで,それはインスタビリティかもしれないし,骨髄浮腫のように骨髄に響く痛みかもしれないし,単に軟骨減少の摩擦増に伴う軋みによる痛みかもしれないし,あるいはもっと複合的であるかもしれません。いずれにしても,病態のステージにより痛みの原因および治療のターゲットは違ってくるだろうと考えています。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。