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Case Study 症例検討

キアリ1型奇形に伴う脊髄空洞症—空洞の形態と疼痛改善の予後予測—

岩波明生戸山芳昭中村雅也

Locomotive Pain Frontier Vol.2 No.1, 32-36, 2013

はじめに
 MRIの普及に伴い,脊髄空洞症と診断される患者の数が近年増加している。諸家の報告にあるとおり,空洞症の早期診断および大後頭孔除圧術(FMD)や空洞クモ膜下腔シャント術(S-Sシャント)法の確立により,術後空洞そのものを縮小することは可能となってきた1,2。しかし実際には,脊髄空洞症患者の症状が必ずしも空洞の縮小によって改善しないことから,治療法は難渋することがある3,4

 脊髄空洞症の患者において疼痛は主症状の1つであるが,その疼痛発症のメカニズムについてはいまだ不明な点が多い。また術後の疼痛改善に関しては術前に予想を立てることが非常に難しい5,6
 本稿では,キアリ1型奇形に随伴して生ずる空洞症の症例を紹介しながら,術前後のMRIを比較することで術後疼痛の改善に影響を及ぼす因子について考察する。
 空洞症や脊髄損傷などによる中枢性疼痛は,グリア瘢痕化や内側毛帯による抑制性の中断に伴う疼痛感覚の鋭敏化が本態であると考えられている7
 近年の研究により,中枢性疼痛のメカニズムがより明らかとなってきた。脊髄視床路などの疼痛に関する求心性線維に何らかの異常が起こると,N-メチルD-アスパラギン酸レセプターを介した異常な神経伝達物質の放出が視床部の背腹側核に起こり,自発痛,いわゆるアロディニアを生ずるとされる8,9。また,中枢性の疼痛は脊髄の後角から大脳皮質までのどの疼痛経路の障害によっても引き起こされる。空洞症の場合においては,脊髄後角の機能不全が中枢性疼痛を引き起こすと考えられているが10,空洞の位置や形態と疼痛経路の障害の関係は明らかにされていない。そこでわれわれは,脊髄空洞症における空洞の形態と術後の疼痛改善について検討した。
 われわれは,過去にキアリ1型奇形に伴う脊髄空洞症と診断された患者25例について,その初発症状や罹病期間,臨床症状の推移などを詳細に検討するとともに,術前後のMRI上の特徴を分類し報告した11
 MRIではその横断像の形態から,中心型,膨満型,偏在型の3つに分類している(図1)。

評価する横断像は,疼痛のある場合は疼痛が生ずるデルマトームの責任高位を,また疼痛のない場合は空洞の大きさが最大となる部位を計測し,術前後の大きさの変化を比較している。

症例提示

【症例1】 27歳,女性。主訴は左上肢痛。術前MRIでは,膨満型の空洞がC2-T4まで存在する。S-Sシャント術をC7/Th1レベルに施行した。空洞は著明に縮小したが,左上肢の疼痛は不変であった。術後MRIでは,C4/5高位に偏在型の空洞が残存している(図2)。

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