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Special Article 総説

腰痛診療ガイドライン

白土修

Locomotive Pain Frontier Vol.2 No.1, 20-24, 2013

わが国では腰痛を有する患者数がきわめて多く,腰痛に苦しむ患者のために,その診断や治療などに関してエビデンスの高い情報提供が求められてきた。そこで,日本整形外科学会と日本腰痛学会が主体となって,腰痛診療ガイドラインの策定が進められ,わが国初の「腰痛診療ガイドライン」が2012年に発刊された。本稿では,発行に至る経緯とガイドラインの概要(定義,診断,管理・治療,経過・予後)について述べる。

はじめに

 腰痛は,1つの疾患単位ではなく「自覚症状」の名称である。腰痛症と呼称する場合,一般には腰痛を呈する疾患全体を総称する。しかし,腰痛を呈する疾患の中には,脊椎腫瘍(原発性・転移性),感染(化膿性椎間板炎,脊椎カリエス),外傷(椎体骨折)など重篤な脊椎疾患が含まれる。これらの疾患が背景にある場合の腰痛には特別な注意が必要であり,原則として腰痛症とは呼称しない。あくまで,筋・骨格・神経系などの部位に生じる退行性病変が主体となって腰痛が発症する場合,これを腰痛症と総称する。
 腰痛を有する患者数はきわめて多い。日本人の有訴者率の中で,男性では第1位,女性では第2位を占める(平成22年国民生活基礎調査)。米国における腰痛患者数も同様に多く,腰痛は医療施設受診原因の第5位を占める。このような状況を下に,世界ではさまざまな腰痛診療ガイドラインが発表されている。慢性非特異的腰痛に関する欧州ガイドラインが2006年に,腰痛症全般に対する米国診療ガイドラインが2007年に発刊された。
 わが国における初の腰痛診療ガイドラインは,2001年に発刊された。当時,厚生科学研究費補助金からの21世紀型医療開拓推進研究事業の一環として,「科学的根拠(Evidence Based Medicine;EBM)に基づいた腰痛診療ガイドライン策定に関する研究」〔主任研究者:白井康正(日本医科大学教授)〕が実施され,その研究報告書の形として発刊された。しかし,この報告書は,エビデンスに基づくガイドラインのための,現在主流となる正式な策定規約に則って作成されたものではなかった。このガイドライン策定後,すでに10年以上経過し,新しい診療ガイドラインを切望する動きも大きくなった。日本整形外科学会と日本腰痛学会は,新しい腰痛診療ガイドラインの策定を決定し,2008年12月,腰痛診療ガイドライン策定委員会を立ち上げ,その制作に着手した。爾来4年の歳月を経て,2012年11月,わが国における『腰痛診療ガイドライン2012』が完成・発刊された。定義上,このガイドラインがわが国初の「腰痛診療ガイドライン」と位置付けされる。
 本稿の目的は,『腰痛診療ガイドライン2012』を紹介することにより,現時点における腰痛診療up-to-dateの概略を述べることである。

ガイドラインの基本的理念と概要

 『腰痛診療ガイドライン2012』は,日本整形外科学会,日本腰痛学会の監修による。日本整形外科学会診療ガイドライン委員会の下に組織された,腰痛診療ガイドライン策定委員会が中心となり策定された。その基本理念は,以下の3点である。

①対象は,整形外科専門医のみならず,一般臨床医を含める。

②腰痛患者のトリアージとプライマリ・ケアを主体とする。

③日本の腰痛診療の実情にあったものとする。

 ガイドライン本文は,定義,疫学,診断,治療,予防の全5章からなる。総計17問のClinical Questions (CQs:定義1, 疫学4, 診断2, 治療9, 予防1)から構成される。これらのCQに対して,CQ別のAnswer(回答)と推奨度(表1)が記載される。

引き続き,Answerに関する詳細な解説が報告される。

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