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Special Article 総説

神経障害性疼痛に対する薬物療法治療指針の考察

住谷昌彦山田芳嗣

Locomotive Pain Frontier Vol.1 No.2, 26-30, 2012

神経障害性疼痛は慢性疼痛疾患のなかで最も重症度が高く,ADLおよびQOLの低下が著しい。神経障害性疼痛の治療のなかでも最も有効性が確立した治療法が薬物療法であり,各種薬剤が用いられているがその選択基準として各学会や各国で治療指針が提案されている。本邦でも2007年に日本ペインクリニック学会から神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインが提案された。本稿では,本邦の治療指針を概説し,今後の課題を考察する。

はじめに

 神経障害性疼痛は“体性感覚神経系の病変や疾患によって起こる疼痛”と定義され1,一般人口の約7%(フランス調査)が神経障害性疼痛を罹患しているとされる。神経障害性疼痛は疼痛疾患のなかでもその重症度が高く罹病期間が長いためQOLの低下が著しい2。神経障害性疼痛に対する治療のなかでEBM(evidence-based medicine)の考えに則って最も有効性が確立した治療法は薬物療法である。国際疼痛学会をはじめとして欧米諸国では神経障害性疼痛の薬物療法治療指針や推奨3,4が提案されてきており,本邦でも2011年7月に日本ペインクリニック学会からEBM情報に本邦の臨床環境を加味した神経障害性疼痛薬物療法治療指針(図1)が発行された5

日本ペインクリニック学会治療指針を中心に神経障害性疼痛の薬物療法を概説するとともに,今後の課題について議論する。

神経障害性疼痛の薬物療法

 神経障害性疼痛に対する第一選択薬としては,三環系抗うつ薬とCaチャネルα2δリガンドであるプレガバリンとガバペンチンが推奨されている。これらの薬剤は複数の神経障害性疼痛疾患に対する鎮痛効果が無作為化プラセボ対照試験(RCT)で示されている。ただし,これら薬剤の有効性を示したRCTのほとんどは帯状疱疹後神経痛と糖尿病性ニューロパチーを対象に実施されており,これら以外にも臨床上多くの神経障害性疼痛疾患(例:化学療法誘発性ニューロパチー,四肢切断後幻肢痛など)が治療対象として認識されているにも関わらずRCTは十分に実施されていない。これは,帯状疱疹後神経痛や糖尿病性ニューロパチー以外の神経障害性疼痛疾患の患者背景の均一化は比較的困難であり,さらに,臨床試験を実施するためのまとまった患者数の集積も困難なことが理由として挙げられる。RCTが行われていないので,これら神経障害性疼痛疾患に対しては,薬物療法の適応から除外してもよいのであろうか? 当然のことながら,これらの神経障害性疼痛疾患にも適切な薬物療法が実施される機会が必要であり,このような観点から,欧州医薬品庁では2種類以上の神経障害性疼痛疾患で有効性が認められる薬剤には,有効性が実際に示されていない他の神経障害性疼痛疾患にも有用性が外挿できるであろうと推測し,疾患ごとの適応を認めるのではなく“末梢性神経障害性疼痛”として広い適応を認めている。本邦の厚生労働省も同様の考えに基づいて,プレガバリンの保険適応を帯状疱疹後神経痛と糖尿病性ニューロパチー両者への有効性から,末梢性神経障害性疼痛と規定している。また,日本ペインクリニック学会の治療指針でも同様の判断から三環系抗うつ薬とプレガバリン,ガバペンチンを第一選択薬として推奨した。
 第二選択薬として,1種類の神経障害性疼痛疾患に鎮痛効果が示された薬剤が挙げられている。糖尿病性ニューロパチーに対して有効性が認められる選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の1つであるデュロキセチン,帯状疱疹後神経痛に対して有効性が認められるノイロトロピン®,糖尿病性ニューロパチーに対して有効性が認められるメキシレチンの3剤である。さらに,これらの薬剤は,各疾患(帯状疱疹後神経痛,糖尿病性ニューロパチー)に限定した場合は第一選択薬の1つとして挙げられる(図1)。

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