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Clinical Question Q&A形式で疑問を解決

Q1 医療用麻薬とはどのようなものですか?

佐藤英俊

Locomotive Pain Frontier Vol.1 No.1, 34-35, 2012

モルヒネなど医療現場で使われている医療用麻薬は,適正に使用すれば安全で非常に有用な薬剤です。

はじめに

 医療用麻薬とは,法律(「麻薬及び向精神薬取締法」)により医療の現場で使用することが許可されている麻薬のことをいいます。いわゆるヘロイン,覚せい剤,大麻など法律で禁止されている不正麻薬とは異なり,製造・販売・管理まで厳しい法的規制があります。医療現場で用いられている代表的な医療用麻薬には,モルヒネ,コデイン,オキシコドン,フェンタニルがあり,主にがんの痛みや激しい痛みに対して用いられています。

医療現場で用いられる主な医療用麻薬1-3

 以下に,主な医療用麻薬について概説します。
1.モルヒネ
 アヘンアルカロイドから抽出される代表的な医療用麻薬です(図1)。

中等度から高度の痛みに用いられ,また激しい咳および下痢にも適応があります。剤形には,錠剤,カプセル剤,散剤,液剤,坐剤,注射剤があります。副作用には,嘔気,眠気,便秘などがありますが,あらかじめ予防することができます。腎機能障害がある場合には,活性代謝物のM-6-Gが蓄積されるので経口薬や坐剤の投与は慎重にすべきです。
2.コデイン
 モルヒネ同様アヘンアルカロイドから抽出される医療用麻薬です。中等度の痛みに用いられます。経口すると肝で代謝されて10%がモルヒネになります。すなわちコデインはモルヒネのプロドラッグです。効力はモルヒネの1/6で,剤型には,錠剤,散剤,液剤があります。なお,風邪の時の咳止めに使用されているリン酸コデインおよびジヒドロコデインは,100倍散なので医療用麻薬の指定は受けませんが,10倍散はまぎれもない医療用麻薬です。言い換えるとほとんどの日本人は,幼児のころから咳止め薬としてコデインを服用しているので,間接的にすでにモルヒネを使用していることになるのです。副作用および腎機能障害がある場合の投与は,モルヒネと同じです。
3.オキシコドン
 アヘンアルカロイドから抽出されるデバインから合成された半合成麻薬です。中等度から高度の痛みに用いられます。効力はモルヒネの1.5倍です。剤型には,錠剤,散剤,注射剤があり,副作用はモルヒネと同様,嘔気・眠気・便秘があります。モルヒネとの大きな違いは,活性代謝物のオキシモルフォンがごく微量にしか血中に存在しないため,腎機能障害があっても安全に内服できることです。
4.フェンタニル
 アヘン由来の医療用麻薬とは化学構造の異なるフェニルピペリジン系の合成麻薬です。中等度から高度の痛みに用いられ,効力はモルヒネの50~100倍です。脂溶性が高く,皮膚から吸収されやすいという特性を持ち,剤形には貼付剤,口腔粘膜吸収製剤,注射剤があります。副作用は,モルヒネと同様,嘔気・眠気・便秘がありますが,程度は低いです。とくに低用量での便秘の発現は,モルヒネやオキシコドンと比較してかなり低いです。
【補足1】 ケタミン
 痛み刺激を伝達する興奮性アミノ酸の作用を媒介するNMDA受容体を選択的にブロックすることによって鎮痛効果を発揮する解離性麻酔薬です。手術麻酔,動物の麻酔,鎮痛補助薬としてがん性疼痛に対して用いられていましたが,医療現場以外での不法使用が目立つようになったため2007年に「麻薬及び向精神薬取締法」の規制対象となる医療用麻薬に指定されました。剤形には注射剤があります。
【補足2】 ペチジン(メペリジン)
 フェンタニルと同様フェニルピペリジン系の合成麻薬で,中等度の痛みに用いられます。効力はモルヒネの1/6です。代謝物であるノルペチジンは,中枢神経系の興奮作用があるので長期投与(たとえばがん性疼痛など)には適しません。剤形には注射剤があります。

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