目からウロコ―水と電解質
第21回 在宅医療の盲点:低Na血症を見逃さないために
掲載誌
Fluid Management Renaissance
Vol.6 No.3 91-93,
2016
著者名
石橋 賢一
記事体裁
抄録
疾患領域
循環器
/
代謝・内分泌
/
腎臓
診療科目
循環器内科
/
腎臓内科
/
糖尿病・代謝・内分泌科
媒体
Fluid Management Renaissance
高齢化社会になって低Na血症が増加しています。その症状は発症速度とNa低下の程度によりますが,軽度の虚脱感・疲労感・頭痛・悪心・食思不振(2日酔いの症状!)から精神錯乱(認知症と誤診!),痙攣,昏睡へと進行します。軽度の低下でも神経筋運動障害で転びやすくなります。早期に気付くことが重要で,急性発症では脳浮腫から脳ヘルニアの危険があります。慢性でも症状がある場合は早めの水分調節とNa補正が必要です。しかし,無症状で軽症であれば早急な治療はむしろ有害で,ゆっくり補正しなければいけないのは次のような危険があるからです。低Na血が2日以上続いたような慢性状態では,細胞浮腫を防ぐために細胞内外の浸透圧差を減らす目的で脳細胞から浸透圧物質(K,グルタミン酸,ミオイノシトールなど)が失われます(homeostasis)(図)。そのため6mEq/L/日以上の速度で血清Naを補正すると,浸透圧物質を細胞内に蓄積する時間が不十分なので,治療で上昇した細胞外Naに水を抜きとられて細胞萎縮をきたします(homeostenosis)。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。