「Summary」1日に食事で摂取し細胞外液に流入するKの量は約1~2mEq/kgであるが,それがそのまま細胞外液中に残存し,細胞外K濃度(血清K値)の上昇として表れることはない。なぜなら,急性調節としての細胞膜のNa/KATPaseポンプによる細胞内へのK移動と,慢性調節としての体外への排泄(90%が腎臓からの尿中K排泄)により,細胞内K濃度は約140mEq/Lであるにもかかわらず,細胞外K濃度(血清K値)はわずか3.5~5mEq/L前後に維持されるからである。このように,腎臓はKバランスの慢性調節の主要な場となるため,腎臓でのK調節の異常はそのままK濃度異常(高K血症,低K血症)を引き起こす。つまり,腎不全患者は尿中K排泄の低下をきたし,特に無尿の透析患者では常にK蓄積に伴う高K血症のリスクに晒されているため,尿中K排泄低下の代償機構として便中K排泄の重要性についても知られている。また近年,高K血症のみならず低K血症も死亡のリスクと有意に関連しているという報告が増えている。特に虚血性心疾患患者の低K血症による不整脈誘発の可能性については以前から報告されており,また透析後の低K血症が少なからず存在すること,さらに透析患者は低栄養などによるK摂取不足やRefeeding症候群のリスクがあることを踏まえると,高K血症のみならず低K血症にも注意して厳格なK管理を行っていく必要がある。本稿では,腎不全患者,特に透析患者のK異常について概説する。
「Keywords」高K血症,低K血症,便中K排泄