「要約」近年,脳内のレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)が血圧調整に必須であり,中枢神経系(CNS)でのアンジオテンシン作動性経路の活性化が高血圧の緩やかな進行に重要であるという多くのエビデンスが明らかになってきた。CNSにおいて,アンジオテンシンⅡ(Ang Ⅱ)はG蛋白共役型受容体であるアンジオテンシンⅠ型(AT1)受容体に結合し,細胞内シグナル伝達を介して最終的に交感神経活性と血圧が上昇する。Ang Ⅱの皮下注により高血圧を誘発したWistar ratの中枢にアルドステロン合成酵素阻害薬とミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬を注入すると,少量のAng Ⅱ投与量で血圧上昇は完全に阻害され,より多い投与量ではさらに10~14日後の血圧上昇が抑制された。Ang ⅡをCNSに注入して誘発した高血圧ラットで同様の実験を行うと,投与後1~2日の血圧上昇に影響はないものの,10~14日後に血圧はコントロール群のレベルまで低下した。体内を循環しているAng Ⅱと中枢のAng Ⅱの両方が,Ang Ⅱによって誘発される高血圧の慢性期に主要な役割を担う脳内アルドステロン-MR依存性の神経修飾経路を活性化すると考えられる。