「はじめに」急性心不全の治療における持続性(persistent)の腎機能悪化(worsening renal function;WRF)が患者の予後悪化因子であることは最近の数々の研究より明らかにされ,2014年のメタ解析でもその結果は支持されている1)。よって,persistent WRF(pWRF)が予後悪化因子であることを否定する人は少ないと思われる。しかし,治療後に血清Crがほぼベースラインの値まで回復するようないわゆる一過性のWRF(transient WRF;tWRF)の予後への影響についてはかなり議論があるようである。筆者は腎臓内科を専門とする者であり,心臓よりも腎臓が大事とする腎臓至上主義者として捉えられるかもしれないが,個人的にはきわめて現実主義であると思っている。だから,必要なときには保存期腎不全患者であっても造影剤の使用は良しとする一方で,エビデンスもないのに腎機能が悪化しているような状況で心収縮能が保たれている心不全(HFpEF)にレニン-アンジオテンシン系阻害薬などによる厳格な降圧に固執しつづけることには反対している。

論点/増山理
是とする立場から/佐藤幸人
・非とする立場から/柴垣有吾

※本企画は,正誤の決着をつけることを目的としたものではなく,また執筆者本人の研究・臨床上の立場を示すものではありません。