「Summary」腎臓は,尿細管において糸球体で濾過されたHCO3-の再吸収と酸分泌を行うことにより,体液の酸塩基平衡の維持においてきわめて重要な役割を担っている。糸球体で濾過されたHCO3-の80%以上は近位尿細管で再吸収され,遠位尿細管以後でHCO3-再吸収と酸分泌の微細な調節を行っている。この酸塩基平衡に関わる輸送体が何らかの原因で障害されると尿細管性アシドーシスを発症するが,その原因として稀ではあるが重要なのが遺伝性疾患によるものである。なかでも,近位尿細管のNa-HCO3-共輸送体(NBCe1)の異常では強いアシドーシスや随伴する臨床症状が特徴的である。ほかに遠位尿細管のプロトンポンプ(V-ATPase)とanion exchanger 1(AE1)などが主な原因遺伝子として知られている。近年,これらの輸送体に関する研究が進展し,詳細な発症機序や各輸送体の機能,およびその調節の機序なども解明されつつあるが,まだ不明な点も多い。
「Keywords」近位尿細管性アシドーシス,遠位尿細管性アシドーシス,NBCe1,Dent病,V-ATPase,AE1
「Keywords」近位尿細管性アシドーシス,遠位尿細管性アシドーシス,NBCe1,Dent病,V-ATPase,AE1