「背景」医療現場においてClを含む輸液の使用頻度は高いが,蘇生時などの大量輸液による過剰なCl投与が高Cl血症や代謝性アシドーシスを引き起こし,腎血管収縮に伴う糸球体濾過量(GFR)の低下や尿量減少を引き起こす可能性が指摘されていた。Chowdhuryらは,生理食塩水とPlasma-Lyte 148([Cl-]98mmol/L)をそれぞれ1時間に2L投与し,腎動脈流速,腎皮質灌流をMRIで比較し、生理食塩水投与群で腎動脈流速および腎皮質灌流は有意に低下することを報告した1)。本研究は,重症患者においてClを制限した輸液を行うことで急性腎障害(AKI)発症にどのような影響があるかを調べたものである。
「方法」オーストラリアの単一施設(Austin Hospital:集中治療室(ICU)22床+救急部)にて行われたbefore-and-after design研究である。血液浄化療法の治療歴のある例を除外し,2008年2月18日~8月17日にICUに入室した760例をコントロール群(Cl無制限),2009年2月18日~8月17日までにICUに入室した773例をCl制限群とし,コントロール群は標準的な輸液治療を,Cl制限群ではClの多い生理食塩水,ゼラチン,4%アルブミンは制限し,Clの少ないHartmann solution,Plasma-Lyte 148,20%アルブミンを投与することとした。