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基礎講座 水電解質のオミックス

第6回 尿のメタボロミクス

秋山真一湯澤由紀夫

Fluid Management Renaissance Vol.5 No.2, 64-68, 2015

「はじめに」メタボロミクスでは,生体内の代謝物(メタボライト)の総体であるメタボロームの網羅的な解析を対象としている。一方,尿中の生体分子を調べて身体の状態を知ろうという試みは歴史的に大変古くからあり,21世紀に入ってからメタボロミクスが登場したことによって測定対象となる尿中生体分子の種類や定量感度が飛躍的に向上した結果,非侵襲的な方法で採取可能な尿は身体全体の分子情報を包括的に取得できる情報源として大いに期待されている。本稿では,メタボロミクスの概念や解析の流れについて概説し,尿を解析対象にしたメタボロミクス研究の特徴や事例について紹介する。
「メタボロミクス研究の概念と位置づけ」メタボロミクスとは,オミックス科学のなかでも比較的新しい分野であり,ほかのオミックス科学と同様に生体内の多数の構成成分の変化についてバイアスを与えない方法で網羅的に一斉探索し,生命現象を包括的に理解しようとする科学的方法論である。メタボロミクスは,代謝の解明,遺伝子や蛋白質の機能の解明,病態形成機序や病期進行機序,治療標的分子の探索,投与薬剤の体内動態や副作用評価などの医薬保健分野だけでなく,食品開発,農業,エネルギー生産,化学品生産,鉱山銅採掘,警察捜査など,多岐にわたる産業分野において幅広く応用されている。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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