特集 臓器浮腫・うっ血の病態とその治療法
肺の浮腫・うっ血の病態と治療法
Pathophysiology and treatment of pulmonary edema and congestion
Fluid Management Renaissance Vol.5 No.2, 51-56, 2015
「Summary」肺毛細血管領域で血液量が増加した状態が肺うっ血であり,血管内水分が肺間質,肺胞腔に漏出して増加した状態が肺の浮腫で肺水腫と呼ばれる。水分貯留の程度は,毛細血管内と間質の静水圧と膠質浸透圧のバランスによって決まる。肺水腫は心原性肺水腫と非心原性肺水腫に分類される。前者は肺静脈圧上昇をきたした肺水腫で,水腫液は漏出液であり心機能低下などの病態が改善すれば比較的速やかに改善する。後者は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に代表されるような血管透過性亢進型肺水腫で,血管内皮バリア機能破綻,肺胞上皮障害のために水分,蛋白の両者が間質,肺胞腔へ移動し,水腫液は滲出液であり,病態の改善には時間を要することが多い。特にARDSは予後不良である。
「はじめに」肺において,肺胞の毛細血管領域で何らかの原因により血液量が増加した状態を肺うっ血という。さらに,病的な状態において血管内水分が血管外の肺組織,つまり肺間質に漏出して血管外水分が正常範囲を超えて増加した状態が肺の浮腫であり,通常は肺水腫と呼ばれる。
「Keywords」肺うっ血,心原性肺水腫,非心原性肺水腫,急性呼吸窮迫症候群
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