「Summary」肝硬変では心拍出量が増加して全身の循環動態は高心拍出量状態(hyperdynamic state)になっているが,末梢血管抵抗は低下して腎への有効循環血液量は減少し,自由水クリアランスや尿中Na排泄は低下している。これを代償するために血管収縮性のNa・水貯留因子が増加し,体液貯留により肝性の浮腫や腹水貯留をきたす。治療法としてはこれまで安静,塩分制限,利尿薬投与などが行われてきたが,治療に反応せず腹水穿刺や腹水濾過濃縮再静注法,腹腔―静脈シャント術といった治療を余儀なくされる症例もみられた。2013年9月に肝硬変における体液貯留を適応としてパソプレシンV2受容体を選択的に阻害するトルバプタンが承認され,既存の利尿薬では十分な効果が得られない肝硬変患者に対する新たな治療選択肢として期待されている。一方で,トルバプタンは投与初期のモニタリングや投与期間など留意すべき点もあり,注意が必要である。
「Keywords」非代償性肝硬変,肝性浮腫,肝性腹水,利尿薬,トルバプタン