目からウロコ―水と電解質
第14回 脳にはリンパ管もマクロファージもない:脳脊髄液による清掃活動
掲載誌
Fluid Management Renaissance
Vol.4 No.4 74-75,
2014
著者名
石橋 賢一
記事体裁
抄録
疾患領域
循環器
診療科目
循環器内科
/
心臓血管外科
媒体
Fluid Management Renaissance
脳にはリンパ管はありませんが,リンパ液とは違って蛋白質がほとんどない脳脊髄液(cerebrospinal fluid: CSF)によって満たされています。脳はミエリンのような脂肪に富んでいて水より軽く,CSFによる浮力のおかげで「水の中の豆腐」のように1.3kgの重量が50gにまで軽減されていて,自重によって潰れないようになっています。さらに,CSFは羊水のように脳を守るクッションの役割も担っています。ローマ帝国時代の医学者ガレノスはCSFが下垂体でつくられ鼻汁として排泄されると考えていました。しかし鼻汁に糖はなく,もし糖が含まれているようなら頭蓋底骨折によってCSFが鼻から垂れている緊急事態です(脳感染を起こす危険)。動脈血から脈絡叢でつくられ,脳室から脳表面に出てクモ膜下腔を循環して,最終的にはクモ膜顆粒で吸収されて静脈に還るというCSFの流れが明らかになったのは,20世紀のはじめです。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。