「要約」肝硬変患者における肝性浮腫は,門脈圧亢進症に付随して起こる末梢血管拡張などから始まり,結果的に水・Naの腎臓での再吸収の増加と肝臓での蛋白合成障害(低アルブミン血症)が増悪因子として発生すると考えられている。肝性浮腫は,腹水・下腿浮腫に伴う自他覚症状を特徴とする。肝性浮腫が持続すると,それらの自他覚症状を増長させてQOLの低下をもたらす。従来,肝性浮腫・腹水の薬物療法として高アルドステロン薬およびループ利尿薬が用いられてきたが,これらを併用しても効果に乏しい症例が存在し,難治性腹水として治療に苦慮する場合に臨床現場ではしばしば遭遇する。トルバプタンは,非ペプチド性のバソプレシンV2受容体拮抗薬であり,Na排泄を伴わずに利尿作用を示すことから,既存の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留に対するadd-on治療薬として期待される。