「Summary」開心術後は,人工心肺の使用による血管透過性の亢進のため間質への水分貯留が起こりやすく,さらに術中・術後の多量や輸液や輸血により水分バランスは過剰負荷となりがちである。心臓血管外科領域においても選択的バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンの使用報告が徐々に増え,開心術症例の水分管理においてその安全性や有用性についての報告が散見されるようになった。しかし,第Ⅲ相試験であるQUEST試験のサブ解析ではトルバプタンの効果はeGFRに依存し,65歳未満が急性効果の予測因子の1つとして挙げられている。われわれの検討では,腎機能低下を認める高齢者に対してもトルバプタンの低用量(7.5mg)の内服治療は腎機能を悪化させることなく尿量を増加させ,血清Na値の改善や水分バランス管理に有効であり,開心術後の水分貯留に対する有用な選択肢となりうることが示唆された。今後は至適投与量や投与時期など,使用法の確立が必要である。
【特集 心臓手術と体液管理】
腎機能低下を伴う高齢者に対する心臓手術の周術期体液管理におけるバソプレシンV₂受容体拮抗薬―使用経験から―
Effects of tolvaptan in elderly patients with reduced renal function
掲載誌
Fluid Management Renaissance
Vol.4 No.4 46-50,
2014
著者名
藤井正大
/
芝田匡史
/
間瀬大司
/
別所竜蔵
記事体裁
抄録
疾患領域
循環器
診療科目
循環器内科
/
心臓血管外科
媒体
Fluid Management Renaissance
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。