はじめに  Na利尿ペプチド(心房性Na利尿ペプチド(ANP),脳性Na利尿ペプチド(BNP))は,松尾・寒川らにより発見され,心不全の診断から治療効果判定,予後予測のみならず治療薬としても用いられるようになった。最近では,心不全診断に至る前段階の高血圧,糖尿病,動脈硬化疾患,虚血性心疾患を有する生活習慣病患者や一般大衆においても心臓血管リスクの予測因子として有用であるとの報告があり,循環器疾患のバイオマーカーとして重要な位置を占めるようになっている。これらの根拠となる報告は,主に心室由来の脳性Na利尿ペプチド(brain natriuretic peptide;BNP)とN端-proBNP(NT-proBNP)濃度に関するものが多い。人口の高齢化に伴い心不全患者が増加し,的確な診断と評価が重要になる。心不全は重症化すると予後不良であり,早期の診断と治療が重要である。BNP,NT-proBNP濃度測定は,『慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)』1)に述べられているように心電図,胸部X腺検査,心エコー検査などの必須の検査に加えて心不全の診断と重症度の評価に有用な心筋バイオマーカーである。