骨は身体の支持組織として運動を可能にするとともに,カルシウムやリンの貯蔵器官としてミネラル代謝にかかわり身体の恒常性維持に寄与する.それに加え近年,骨が他臓器を制御する因子を産生する内分泌組織として機能することが注目されてきている.本稿では骨と他臓器を結ぶ「オステオネットワーク」による全身臓器の制御について概説したい.
骨は液性因子を介して全身臓器を制御する.骨芽細胞や骨細胞は骨髄環境を調節し,造血幹細胞の維持や血球分化に関与することが提唱されている.また造血幹細胞の血液中への動員に対する破骨細胞の関与が議論されている.骨芽細胞が産生するオステオカルシンは膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するほか,精巣に作用してテストステロンの産生を促進,脳に作用してドパミンなどの神経伝達物質の産生を促進することで幅広く全身臓器の制御に寄与する.