「はじめに」2013年に発覚した複数の降圧剤臨床試験と,引き続くSTAP細胞研究の不祥事は,わが国の医学研究コミュニティに「品質保証」や「出版責任」の考え方が根付いていないことを浮き彫りにした.筆者がLancetのJikei Heart Studyの論文を読んだときの第一印象はまさに,「品質保証は大丈夫か」であった.試験統計家とされている統計家はわれわれの知己ではなく,またデータセンターは明記されていなかったからである.(大阪市立大学のClinical Epidemiologyという教室名は記載されていたものの,それが実質的に機能しているという情報は持ち合わせていなかった.)
「試験統計家の役割」臨床試験の品質保証とは,臨床試験実施のシステムを構築し,日々の品質管理の行動を通じて,得られるデータが信頼できることと参加される被験者の安全を確保することである.医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(Good Clinical Practice;GCP)の目的はこの品質保証にある.