Column コラム
ナマコの世界~ホネのない生き方~
掲載誌
O.li.v.e.―骨代謝と生活習慣病の連関―
Vol.4 No.1 58-59,
2014
著者名
本川達雄
記事体裁
抄録
疾患領域
骨・関節
/
その他
診療科目
整形外科
/
その他
媒体
O.li.v.e.―骨代謝と生活習慣病の連関―
気骨に欠ける武士の形容に「海鼠(なまこ)武士」という言葉があったそうだ. 骨がなくぐにゃぐにゃしているものの代表格がナマコだというのが世間の常識で, 本稿も「ホネのない生き方」というお題でナマコについて書けとの依頼である. だがナマコにはれっきとした骨がある1). ただし, ごく小さく(0.1mm程度)骨片と呼ばれているものだ(図1右). 小さいけれど数は膨大で, 1匹のナマコに2千万個もの骨片が入っている. ただし, 総重量としては体重の1.5%程度. 大部分は体壁の皮(真皮)中に存在する. ナマコは棘皮(きょくひ)動物の仲間である. この仲間の代表格がウニで, 立派な殻(炭酸カルシウムの骨)をもち, 体の表面を覆って保護しているし, 棘まで生やしている. ちなみに, 棘皮動物は脊椎動物と同様新口動物であり, われわれ脊椎動物とは近縁である. 他の棘皮動物(ウニ, ヒトデ, クモヒトデ, ウミユリ)には大きくて立派な殻があるのに, ナマコだけ骨が小さくなったのは, 進化の一時期, ナマコが海底の砂の中に潜る生活に移行し, 殻で身を守る必要がなくなったからだと想像されている.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。