血管石灰化は, 多数の因子が開与している複雑な病態である. リン酸とBMP2は血管平滑筋細胞に作用し, 転写因子(Msx2とRunx2)を活性化させ, 骨芽細胞へ分化させる強力な因子である. また, Notchシグナルは, 直接にMsx2遺伝子の発現を誘導する. Receptor activator of nuclear factor κB(RANK), RANK ligand(RANKL), およびオステオプロテジェリン(OPG)は, 骨芽細胞と免疫系の調節因子として機能する. 終末糖化産物(AGEs), HMGB1あるいはS100はreceptor for advanced glycation products(RAGE)と結合し, 細胞内に炎症シグナルを誘導するとともに, Notchシグナルを誘導し, 血管石灰化を促進する.
「血管石灰化は骨形成に類似した能動的な過程」長いあいだ, 血管石灰化は血管細胞の変性過程に起こるカルシウム結晶の受動的な沈着であり, 加齢に伴う生理的な現象と考えられていたため, ほとんど研究の対象とならなかった.