<< 一覧に戻る

Case Report

自己判断でPrEPを開始したが,実際はHIV陽性であったため薬剤耐性となった症例

水島大輔

HIV感染症とAIDSの治療 Vol.12 No.1, 39-42, 2021

国内においても曝露前予防投薬(pre-exposure prophylaxis;PrEP)の認知度が男性同性間性的接触者(men who have sex with men;MSM)を中心に急速に高まり,ジェネリック医薬品をインターネットで自己輸入するPrEP利用者が急増している。一方で,PrEPに関するインターネット上の情報は玉石混交で,正しい情報を持たずにPrEPを実施する者も増加傾向にある。PrEPの正しい情報提供の普及に関して,日本におけるPrEPの認可の遅れがPrEPの積極的な情報提供の妨げとなっているが,近年,誤った情報に基づいた不適切なPrEPの実施に伴う薬剤耐性ウィルスの出現例が報告されている。そもそもPrEPは適切に行えばHIV感染症をほぼ予防でき,HIVに感染したとしても,薬剤耐性ウィルスの出現頻度は少ないと考えられている1)。適切なPrEPの実施には,PrEP開始前およびその後3ヵ月ごとのHIV検査が必須である。HIV感染者が自らのHIV感染を知らずにPrEPを開始すると,予防ではなく治療が必要となるためPrEPの薬剤であるエムトリシタビンとテノホビルの合剤(TDF/FTC)またはエムトリシタビンとテノホビルアラフェナミドの合剤(TAF/FTC)の2剤では不十分で,薬剤耐性ウィルスが出現する可能性が高い。そのほかにも,腎機能障害の副作用や他の性感染症(sexually transmitted infection;STI)に関しても,定期的な検査が必要であるが2),近年のPrEPへの関心の急激な高まりに正しい情報へのアクセスの確保が追い付いていない現状で,PrEPの不適切な使用の現状を把握することが急務となっている。
本稿では,HIV陽性の可能性が高いにもかかわらず自己判断でHIV検査を受けずにPrEPを開始し,後にHIV感染症が判明して,2020年以降に当院を受診した4症例を提示する(図1)。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る