HIV感染症における肛門管癌の発生率は非HIV感染者と比較して有意に高く,特に,男性間性交渉者(MSM)で問題となる。肛門直腸への高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が契機となるが,女性の子宮頸癌のスクリーニングと異なり,MSMにおける肛門管癌のスクリーニング法は確立していない。若年での発症などには注意が必要である。MSMにおける他の肛門直腸の性感染症(STI)として,淋菌やクラミジア・トラコマティス感染症も多く,その大部分が無症状であることから,感染源となりやすいことが考えられる。肛門直腸の淋菌・クラミジア検査が保険収載され,高リスク者への定期的な検査が可能となることが今後の課題である。
「KEY WORDS」淋菌,クラミジア・トラコマティス,ヒトパピローマウイルス(HPV),肛門直腸感染,肛門管癌