診断と治療のTopics
STDによるHIV感染の促進
The increased risk of HIV acquisition by sexually transmitted diseases
HIV感染症とAIDSの治療 Vol.6 No.2, 19-25, 2015
「Summary」異性間の性行為HIV感染初期において,HIVはパートナーの包皮/膣の上皮内ランゲルハンス細胞(LC)への感染を足がかりとして,重層扁平上皮内の強固なバリアをくぐり抜けて生体内に侵入していく。一方,性感染症(STD)保有者では性行為HIV感染リスクが数倍~十数倍高くなるという疫学的研究結果に基づき,HIVの世界的な流行を阻止すべく,HIV以外のSTDを治療する予防戦略が全世界で精力的に推し進められている。近年,STD病原体が性行為HIV感染リスクを増加させるメカニズムの1つとして,STD病原体に対する宿主の自然免疫応答が皮肉にもLCを介したHIVの生体内侵入を助長している可能性が示唆されている。
「はじめに」HIV-1に対する有効なワクチンがいまだ存在しないため,現在でも世界で年間約230万人もの人が新たにHIVに感染している(UNAIDS report on the global AIDS epidemic 2013)。本邦では,新規HIV感染者・新規AIDS患者報告数のいずれも近年やや減少傾向にあるものの,ここ数年は年間約1,500件ほどの新規報告が続いている。
「Key words」HIV,STD,ランゲルハンス細胞,自然免疫,内因性免疫
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。