Essay 痛みの記憶
基本的人権,術後慢性疼痛,Anoci-Association
掲載誌
Practice of Pain Management
Vol.5 No.4 63,
2014
著者名
小松徹
記事体裁
抄録
疾患領域
精神疾患
/
骨・関節
診療科目
整形外科
/
麻酔科
/
精神科
媒体
Practice of Pain Management
1948年に設立された世界保健機関(WHO)は健康であることは人間の基本的人権であるとした.WHOは「健康」を「完全な身体的,精神的及び社会的福祉の状態であり,単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義した.国際疼痛学会は,2010年に「疼痛管理を受けるのは基本的人権である」と宣言した.私が,術後患者の健康,生活の質(QOL)に目を向けるきっかけになった最初は2000年9月19日のニューヨークタイムズの記事“Saving the Heart Can Sometimes Mean Losing the Memory(心臓を救うことは,時には,記憶喪失をきたすことを意味する)”を目にしたときである.その記事の中でニューオリンズの弁護士が冠動脈バイパス手術後に記憶障害のため,弁護士活動ができなくなった.術後認知機能が低下をしてまでの心臓手術の意味は何かと疑問が述べられていた.もうひとつは,友人の外科医が,鼡径ヘルニア手術後,遷延性疼痛に苛まれ,医師を辞めざるを得なくなったことである.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。