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Trend & Topics 痛みを癒す

アンドロイドセラピーを目指して―アンドロイド参加型自律訓練法の試み―

中江文安達友紀力右武信吉川雄一郎松田陽一柴田政彦石黒浩眞下節

Practice of Pain Management Vol.4 No.3, 32-36, 2013

Summary
 少子高齢化社会を迎えているわが国において,医療現場でのロボットの活用は重要な課題である.また,痛みは若年者においてはQOLの低下,高齢者においてはさらなる身体機能の低下に直結するため,その治療は重要であるが,侵襲的な治療や薬物療法は,副作用などの観点から必ずしも第一選択とはなりえない場合がある.特に,慢性痛患者には行動療法が有効な場合がある.しかし,人手の問題,コストの問題などから,なかなかどの施設でも十分行うことができるものではない.
 われわれは,将来のロボットを活用した医療の可能性の検証を目的とし,ヒト型ロボットであるアンドロイドを用いた自律訓練法の試みを行ったので紹介する.

はじめに

 医療現場,介護現場におけるロボットの役割は,今後少子高齢化が進み,医療・介護の担い手の数に対し,必要とする方々の数が増えていくことが十分予想される昨今,ますます期待が高まっていくことと考えられる.少子高齢化先進国としての安定した医療・福祉の持続性確保のために,人間に親和性の高いロボットの開発は重要課題である1).
 われわれは平成21年度から文部科学省のグローバルCOEプログラム「認知脳理解に基づく未来工学創成」の開始とともに,研究面で学問分野間の学際的融合と新たな学問領域の創成を図る国際的に新規性のある拠点形成を目的に,ともに活動を行ってきた.医療現場におけるロボットといえば,手術支援ロボットのda Vinchのように直接支援を行うものがイメージされがちであったが,われわれは人間に親和性の高いロボットの開発を目的として,人とそっくりの外観をもったヒト型ロボットであるアンドロイドの可能性を検証してきた2).ロボット工学の進歩は目覚ましく,アンドロイドは,演劇などでも用いられ,まるで本当の人間のような振る舞いに近づいている(図1).

他方,アンドロイドは人によってプログラミングされた動きのみを行う場合,ヒトにありがちな余分な動作を行わないため,その所作に独特の透明感が生まれる.このことはむしろアンドロイド独自の世界が構築される要因となっている.
 自律訓練法は,ドイツの大脳生理学者Vogtの臨床的催眠研究を基礎にして,精神医学者Schultzによって体系化され3),さらにLutheらによって展開されてきた心理生理学的治療法である4).その効果は痛みに限らず,種々のストレス性の疾患に応用されている治療法である5).自律訓練法は,ひとたび身につけると自分自身で行うことが可能となり,薬物療法のように朝晩に行うことも可能である.薬物療法のような副作用の心配が少なく,特に高齢者や,心機能・腎機能に障害があるような患者には勧めやすい方法といえる.痛み治療においては特に慢性痛患者で,薬物療法が有効でない場合,薬物の副作用を懸念する場合,自分の力で痛みを癒す効果を出すことによる自己効力感を増す効果を期待する場合などに利用される6).
 うまくその効果を体感できているときには,催眠にかかったような錯覚に陥ることがある.筆者はそれが,アンドロイド演劇を鑑賞したときに感じた独特の感覚に近く感じられ,アンドロイドが参加した自律訓練法が患者に役立つのではないかと考え今回の試みに至った.

アンドロイド参加型自律訓練法の実際(図2)

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