さまざまな経験を経て痛み診療に  思い返してみると,私は最初から麻酔科に入局を決めていたわけではなく,学生の頃は脳神経外科に興味がありました.しかし,医学部卒業後にいきなり脳神経外科という特殊な領域に入るまえに,もういちど全身を勉強してから専門領域を決めたいと考えて,麻酔科に入局することにしたのがこの世界に入るきっかけでした.  日本大学医学部附属駿河台病院の麻酔科で2年間周術期患者管理を学び,ある程度手応えを感じてきたころ,東京都健康長寿医療総合センターで高齢者麻酔を勉強する若手研究者の募集が舞い込んできて,教授の勧めもあり異動することになりました.東京都健康長寿医療総合センターでは週4日臨床麻酔,週1日は動物実験という生活を1年間送りました.その頃は自律神経の電気生理の研究に取り組み,全身麻酔をかけながら鎮痛薬を評価する実験系の確立という研究テーマを与えられて,実験データと格闘する日々でした.