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Case Report 症例報告

ECTが対照的な効果を示したPHNの2症例

米良仁志

Practice of Pain Management Vol.3 No.3, 52-54, 2012

はじめに
 当院では視床痛,CRPS(complex regional pain syndrome),PHN(postherpetic neuralgia)などの難治性慢性痛に対してECT(electroconvulsive therapy)を行ってきた1).最近,PHNに対して対照的な結果を示した2症例を経験した.ECTはこれまで痛みに対する最終手段と位置づけて行ってきた.PHNに対しては強い持続痛だけでなく,激しい電撃痛,アロディニアなどで日常生活や精神的に多大な支障2)をきたしている重症例であることが前提であった.劇的に効果の得られた症例もあったが,視床痛やCRPSに比べると効果は不十分な例も多く,再発の問題もあり,最近はPHNに対する施行は少なくなっていた.今回の2症例は過去の例と比較すると日常生活にそれほど支障なく,痛みの程度も比較的軽いと思われる症例であった.

症例1 69歳 男性

主 訴 PHN(右V1) 既往歴 糖尿病,高血圧
現病歴 X年4月発症.入院にて抗ウイルス薬点滴治療をするも痛みが改善せず,9月からペインクリニック専門の施設で4年間SGB(stellate ganglion block)を主とした神経ブロック治療を受けていた.その後も痛みが改善せず,X+4年11月ECT目的で当院紹介された.
治療経過 X+5年1月入院し,ECT施行となった.1回目終了後に効果を認め,痛みは半分以下に改善,4回目終了ごろにはVAS(visual analog scale)は70から20以下になり,予定の8回終了時にはVASは0に劇的に改善した.この効果はそれまで服用していた鎮痛薬,抗うつ薬,抗けいれん薬を中止しても2カ月持続した.4月に入って少しずつ痛みが再発し投薬も再開した.5月にはまたもとの痛みに近くなってきたとの訴えで,6月に再度ECTを8回施行した.VASは0になり,この効果は翌年5月まで持続した.その後,少し痛みが出てきたため投薬を再開し,SGBを2週に1回程度で施行し,現在までVAS0~20で落ち着いている.

症例2 70歳 男性

主 訴 PHN(左Th5)
既往歴 糖尿病(インシュリン6-8-8IU),間質性肺炎
現病歴 X年3月初旬発症.大学病院入院にて点滴治療を受けるも治療効果がなく,4月に疼痛コントロール目的で当科紹介された.肋間神経ブロック,胸部硬膜外ブロックを主体とした神経ブロック,各種薬剤,漢方投与をするも自覚的には全く効果が得られず,翌年3月ECT検討となった.しかし,当院の適応における客観的指標である脳SPECT(単光子放射線コンピュータ断層撮影:single photon emission computed tomography)による罹患部位の対側視床の血流低下3)や,サーモによる皮膚温低下が全く認められず,効果が得られない可能性も説明したが,本人の強い希望がありECT施行となった.
治療経過 ECTを週2回で計11回行った.初回から9回はパルス波治療器サイマトロン®で施行し,最後の2回はサイン波の治療機で行った.アロディニアが少し改善した感じがする,と表情が穏やかになったが,自覚的にはVASは100のままで全く変わりないとの評価であった.

考察

 ECTは症例1の初回入院時,症例2ともにサイマトロン®では痙攣がかかりにくかった.2症例ともに最後の2回はサイン波で行われている.症例1は多少の健忘は出現したが自覚的には問題なく,劇的に痛みは改善したので非常に感謝された.症例2は健忘などの副作用はほとんど認められなかったが,効果も全く得られなかった.今回の対照的な結果となった原因であるが,脳SPECTによる視床血流の左右差が,症例1では対側が少し低下しているが,症例2では逆に増加していること(図1),サーモグラフィでも症例1では罹患部位の皮膚温低下が認められたが症例2では認められなかったことが挙げられる.

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