「はじめに」第2回では, いくつかの筋・筋膜性疼痛モデルを取り上げ, これによって何がわかってきたのか, 残されている問題は何かを明らかにしたい.
「(1)遅発性筋痛のメカニズム」不慣れな激しい運動後に, しばらく痛みのない時期があったのちに(大体翌日ぐらいに), 筋を動かしたとき(運動時痛)や筋を圧迫したとき(圧痛)に生じる痛みを遅発性筋痛という. このときには筋力も低下しているし, また筋の腫れも生じている. “筋肉痛”というときは, しばしばこの痛みを指すことがあるほどポピュラーである. 特に治療をしなくても3日~1週間以内に消失するので, 医療の対象となることはない. 遅発性筋痛は日常生活で起こり, かつ治療も不要なので, このモデルは動物で作ることができるだけでなく, ヒトでも実験的に作られて1,2), 種々の解析が行われている. 筋が伸張を受けながら収縮する伸張性収縮が, 遅発性筋痛を生じることが知られており, 実験ではこの収縮を負荷することにより遅発性筋痛を誘発する.