Trend & Topics 日本の痛みの今
運動器慢性疼痛の現状
Practice of Pain Management Vol.3 No.2, 20-24, 2012
「Summary」わが国における運動器の慢性疼痛の実態と問題点を明らかにするために疫学調査を施行した. その結果, 運動器の慢性疼痛は長期の治療にもかかわらず, その改善は必ずしも得られず, 治療に対する満足度は低かった. また, 有症者自身の身体および精神的健康, さらには社会生活に悪影響を与え, 日常生活において介助を要する機会が増加するために周囲に与える影響も少なくなかった. 運動器の慢性疼痛に対する治療法と治療体系の早急な見直しが必要である.
「はじめに」厚生労働省の国民生活基礎調査によると, 頻度の高い自覚症状として腰痛, 肩こり, 関節痛, 頭痛といった痛みの症状が上位を占める1). しかし, これら慢性的な疼痛の問題は, 致死的でない, 各科にまたがる領域である, 実態がよくわからない等々の理由により, 個別の行政施策がこれまであまり行われなかった領域であった. しかし, 1998~1999年に行われた全米調査によると, 程度の高い慢性疼痛に悩む患者が成人人口の9%を上回ること, 無効な治療やドクターショッピングなどにより医療資源が浪費されていること, 疼痛のための就労困難などによる社会的損失が年間650億ドルにのぼることなどが明らかになり, この慢性疼痛が医学, 公衆衛生学的問題としてクローズアップされるに至った2).
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。