人間全体をトータルで診る麻酔科医を目指して  私が麻酔科の医師という道を選んだきっかけは,医師としての教育を受けた際に感じた,全人的な医療の重要性でした.当時は臓器別の医療が大きなトレンドでしたが,実際に患者さんに接するなかで,どの部位にも特化せず,人間全体をトータルで診るという意味で,麻酔科そしてペインクリニックという領域に大きな魅力を感じました.実際に臨床で手術麻酔に携わってみると,手術中でも術後でも,患者さんの痛みがとれているか否かで,たとえば血圧が上がったり,脈拍が増えたり,内分泌系の物質にも変化が現れます.さらに,痛みは患者さんの心理にも影響を与え,時には落ち着きを失わせたり,不安にさせたりします.逆にいえば,痛みをコントロールすることで,患者さんに対する全人的な医療に貢献できるのではないかと考えたのです.