はじめに  認知行動療法(cognitive-behavior therapy;CBT)とは,元来,抑うつ,不安,恐怖などの精神医学および心理学における研究から生まれた治療法である.患者の思考や信念(認知),行動,感情を心理学的な訓練によって変化させて,それらの問題を治療する1).精神科的な問題では,抑うつや不安など否定的感情が治療対象になることが多い.しかし,感情を直接変化させるのは難しいため,認知や行動を変えることで間接的に変化させる.たとえば,抑うつの治療であれば,「自分はだめな人間だ」などの否定的認知(認知)や,一日中寝ているような不活発な生活(行動)を変えることで,間接的に抑うつ気分(感情)の改善を目指す.