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座談会(Round Table Discussion)

神経障害性疼痛

小川節郎山下敏彦柴田政彦

Practice of Pain Management Vol.1 No.1, 4-12, 2010

はじめに
柴田(司会) 最近, 神経障害性疼痛(neuropathic pain)が注目されつつありますが,どのような病態を指しているのか,どのように治療をすればよいのかなど,まだまだ議論を深める必要があると思います.そこで本日は駿河台日本大学病院病院長の小川節郎先生,札幌医科大学整形外科教授の山下敏彦先生にお話をうかがいながら,神経障害性疼痛をめぐる問題について考えていきたいと思います.

出席者(写真右から順)
小川 節郎 Ogawa Setsuro
駿河台日本大学病院病院長

山下 敏彦 Yamashita Toshihiko
札幌医科大学医学部整形外科学講座教授

柴田 政彦 Shibata Masahiko (司会)
大阪大学大学院医学系研究科疼痛医学寄附講座教授

整形外科領域における神経障害性疼痛

柴田 まず山下先生,整形外科領域で診察する神経障害性疼痛はどういう症状が多く,また,何が問題になっているとお考えになられていますか.
山下 整形外科を受診する患者さんのほとんどが痛みを主訴としており,変形性関節症などに代表される侵害受容性疼痛の患者さんが多いです.一方で,脊椎疾患の患者さんも多く,脊柱変形では必然的に神経根や脊髄に障害をともないます.よって,神経障害性疼痛で最も多いのは,脊椎疾患にともなう神経根障害だと思います.なかでも腰部神経根障害,いわゆる坐骨神経痛といわれる症状がよくみられます.また,手根管症候群や肘部管症候群といった末梢神経の絞扼性神経障害も頻度が高いです.これは痛みというよりも,しびれ感を主訴とすることが多いです.さらに頻度は低いのですが,整形外科では複合性局所疼痛症候群(complex reg2nal pain syndrome;CRPS)といった難治性神経障害性疼痛も扱いますし,術後に遺残する疼痛として脊椎手術後症候群(failed back surgery syndrome;FBSS)も非常に治療に難渋します.
柴田 最近は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混在している病態もまれではないことがわかってきており,ドイツでは両下肢痛のmixed pain という概念も出てきていますね.
山下 脊椎疾患にともなう痛みは混在しているケースが多いと思われます.特に変形性脊椎症は,脊椎自体の退行変性による変形性関節症と同様の病態に加え,神経の圧迫もあるため,神経障害性疼痛が起きるケースが多く,むしろ脊椎疾患では神経障害性疼痛単独のケースのほうが少数派ではないでしょうか.若年者では椎間板ヘルニアで下肢痛のみが症状のことがありますが,中高年以上では腰背部痛などの侵害受容性疼痛をともなうことが多いと思います.

ペインクリニックの領域における神経障害性疼痛

柴田 小川先生,麻酔科およびペインクリニック領域で診察する神経障害性疼痛については,いかがでしょうか.
小川 ペインクリニックという名前のとおり痛みの診療科なので,さまざまな痛みを扱いますが,やはり神経障害性疼痛で圧倒的に多いのは帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia)でしょう.高齢者に多くみられる疾患ですから,高齢化社会の日本では今後も患者数が増えると思われます.

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