頭痛の不思議
芸術家が表現した片頭痛―2人の作家の日記から―
掲載誌
Headache Clinical & Science
Vol.6 No.2 40,
2015
著者名
岩田 誠
記事体裁
抄録
疾患領域
神経疾患
診療科目
脳神経外科
/
神経内科
/
麻酔科
媒体
Headache Clinical & Science
片頭痛持ちの芸術家は多い.そんななかで,2人の女流作家の残した日記から,彼女たちの片頭痛をみてみよう.24歳で早逝した樋口一葉は,短い作家活動のなかで,「にごりえ」,「たけくらべ」,「大つごもり」,「十三夜」などの傑作を残した.彼女は,明治24(1891)年4月11日から明治29(1896)年7月22日までの5年間の日記を残しており,それを読むと,頭痛発作を頻発していたことがわかる.1891年7月25日の日記には,「三時頃帰宅す.頭(かしら)いといたくてせんかたもなく苦しければ,今宵は十時に床へ入(いり)ぬ」と書かれている.この頃,彼女は中島歌子の営む歌塾「萩の舎(や)」に通って歌を学んでいたが,この日は,前の晩,内職の夜なべ仕事で仕立て上げた縫物に火のしをあてて届けた後,急いで萩の舎に向かった.そんな少しほっとしたなかで生じてきた発作であったのだろう.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。