片頭痛と緊張型頭痛はそれぞれの頭痛の特徴や症候の一部に共通したものがあり, 非典型的な場合は診断が困難なことがある. 1人の片頭痛患者の頭痛は年代により性状が変化する. 特に高齢者では持続性の鈍痛となり頭痛の性状だけでは鑑別が困難となることが多い. そのため, 片頭痛と緊張型頭痛はもともと同じ疾患の延長線上にあるものではないかと考えることもできる. 今回の誌上ディベートでは「片頭痛と緊張型頭痛は同じ疾患か」というテーマでお2人の専門家にそれぞれ是か非かの立場で論じていただいた. 海野先生には"是"の立場で論じていただいた. 片頭痛と緊張型頭痛には症候の共通性だけでなく, 痛みの発現メカニズムにも一部共通性があると指摘された. 片頭痛患者の頭痛発作が毎回同じでなく, 程度や持続時間がその都度変化すること, 加齢とともに頭痛の性状が変化する変容性片頭痛について紹介された. 頭痛診療における高齢者の薬剤選択を考えるうえでも重要な点である. 古和先生には"非"の立場で論じていただいた. 実際の臨床現場でも, 両疾患の共通する症候に注目するだけでなく, 国際頭痛分類の診断基準に沿って相違点を洗い出し的確な診断をする努力が重要とご指摘いただいた. 診断基準に採用されていない予兆や随伴症状に着目するとさらに診断が容易となるとのご指摘は, 臨床の現場では重要なことである. 今回お2人の先生に「片頭痛と緊張型頭痛は同じ疾患か」というテーマで読み応えのある内容のディスカッションを展開していただいた. この問題をクリアカットに解決してくれるマーカーが現れるまで, 日常臨床の現場ではこの疑問を持ちながら診療を続けることになろう. これも頭痛診療の興味深さの1つと思われる.

※本企画はテーマに対して,あえて一方の見地に立った場合の議論であり,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません.