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Meeting Report

第23回日本肝臓学会大会(JDDW 2019)

滝川一

The Liver Cancer Journal Vol.12 No.1, 46-48, 2020

2019年11月21日(木),22日(金)に,JDDWに参加して第23回日本肝臓学会大会を神戸で開催いたしました。この学会は本来,東京医科大学茨城医療センターの故松﨑靖司先生が開催される予定でしたが,2018年12月9日に急逝され,私が代行を務めました。私自身JDDWは,2015年開催の第57回日本消化器病学会大会に引き続き2回目の会長を務めることになりました。また肝臓学会としては,2013年開催の第49回日本肝臓学会総会会長以来でした。私が会長代行に就任した時点で,学会のプログラムはすべて決まっていたので,後は準備委員長の池上 正先生はじめ,東京医科大学茨城医療センターの方々にお任せして準備を進めました。

学会初日の開会式(写真1)でJDDWが始まりました。最終的に2019年のJDDW参加者数は22,444名と,2016年のAPDW同時開催の22,616名に迫る,単独開催としては過去最高となりました。

5名のJDDW参加学会会長と下瀬川徹理事長

松﨑先生が付けた学会のメインテーマは「ポストHCV 時代の肝臓病学の展開 ~原点を考えよう肝臓病学~」でした。実は私自身,同様のテーマを2013年の総会の時に付けたかったのですが,6年前では過激すぎるので,断念したいきさつがありました。
会長講演は松﨑先生が「我がライフワーク 胆汁酸:原石を磨く,細く長く」を講演される予定でしたが,竹原徹郎理事長ほかの勧めもあり,私がその代わりに追悼講演を行いました。タイトルは「胆汁酸研究と共に歩んだ松﨑靖司先生」とし,私と松﨑先生のこれまでの関わりや,東京医科大学茨城医療センター消化器内科の研究データを中心に,胆汁酸研究の現状と将来の展望について講演しました(写真2)。

追悼講演

特別講演は5演題で,東京大学理学系研究科の菅 裕明先生に「ペプチド創薬プロセスの革命とイノベーション」を,東京大学医科学研究所の谷口英樹先生に「iPS細胞を用いたヒト肝臓の再構成」を,広島大学の茶山一彰先生に「ウイルス肝炎研究の進歩と今後の課題」を,慶應義塾大学の坂元亨宇先生に「肝臓病理の歴史と未来」をご講演いただき,私も「薬物性肝障害の現状と今後」の講演を行いました。
海外招待者による招待講演は米国国立衛生研究所(NIH)のFrank J. Gonzalez先生,ウィーン医科大学のMichael Trauner先生,Beth Israel Deaconess Medical CenterのNezam Afdhal先生,ワシントン大学のStefan Wiktor先生,延世大学のSang Hoon Ahn先生に,各々の主題セッションの前に関連した講演をしていただきました。
なお,国際セッションはすべて英語で行われるのですが,Trauner先生,Afdhal先生,Ahn先生の講演後の主題セッションでも,海外招待者にも司会者として加わっていただくとともに,日本人の講演を可能な限り英語でお願いしました。これは,2018年開催の榎本信幸先生が会長を務められた第22回大会,2019年開催の持田 智先生が会長を務められた第55回総会を継承したものです。演者の方々には演題登録時にそのような案内はせず,後からお願いすることになり申し訳ありませんでした。若い学会員が英語で発表して議論するのは,日本の肝臓学の将来のために重要と考えた次第ですので,今後も是非,続けていただきたいと思います。
肝臓学会主導の国際セッションのシンポジウムは本多 彰先生,田中 篤先生,田中直樹先生,Gonzalez先生の司会で,「胆汁うっ滞の病態から新治療への展開」のタイトルで行いました。その他2つのシンポジウムとして,朝比奈靖浩先生,鈴木文孝先生,田中靖人先生,Afdhal先生の司会で「肝臓病学におけるウイルス肝炎診療の歩みと今後の展望」が,加川建弘先生,池上 正先生,伊藤清顕先生,Trauner先生の司会で「胆汁酸研究の新たな臨床展開:自己免疫性肝疾患からウイルス肝炎,生活習慣病まで」が行われました。
肝臓学会主導の統合プログラムとして,坂井田功先生,調 憲先生の司会でシンポジウム「肝移植と肝再生の現状と展望」が,内藤裕二先生,中牟田誠先生の司会でパネルディスカッション「食と消化器疾患」が行われました。
肝臓学会主導のパネルディスカッションとして,徳重克年先生,江口有一郎先生,芥田憲夫先生の司会で,「NAFLD,NASH診療の最前線と今後の展開」が行われました。
肝臓学会主導のワークショップは5つで,相方 浩先生,梅村武司先生の司会で「薬物性肝障害:臨床・研究のUp to Date」が,矢野博久先生,原田憲一先生の司会で「肝臓病理の臨床への貢献と次世代への飛躍を目指して」が,上野義之先生,阿部雅則先生の司会で「自己免疫性肝疾患診療の最前線:現状の課題と今後の展開」が,黒崎雅之先生,神田達郎先生の司会で「B型肝炎診療;未来への展望を踏まえた現在の在り方」が行われました。
本誌と関連する肝癌のセッションは本学会では1つだけで,飯島尋子先生,吉田 寛先生,玄田拓哉先生,Ahn 先生の司会で,Ahn先生の招待講演「Recent advances in clinical research of HBV and HCC」に引き続いて,ワークショップ「長期生存を目指した肝がん診療の最前線」が行われました(写真3)。このセッションは初日の午前中に行われたため,私は別会場で薬物性肝障害の特別講演を行って,その後のワークショップを聞いていたため,出席できませんでした。驚いたのは,薬物性肝障害のワークショップの参加者数で,かつてないほどの230名でした。これは同時進行のウイルス肝炎のシンポジウムの330名,肝癌のワークショップの250名にひけを取らない人数で,時代の流れを感じました。

ワークショップ「長期生存を目指した肝がん診療の最前線」の司会者

一般演題はすべて,デジタルポスターセッションで行われました。今回から,一般演題の中で各学会から1名の会長賞を授与することになり,査読得点の最も高かった東京医科歯科大学の柿沼 晴先生に差し上げ,講演をしていただきました(写真4)。

会長賞授与式

以上のように,盛会裡に終了することができ,会長代行の職務を果たせたと思っています。これもひとえに,会員の皆様のご指導,ご尽力の賜物と,心から御礼申し上げます。また,直接運営に携わっていただいた東京医科大学茨城医療センターの皆様,肝臓学会とJDDWの事務局の方々に深謝します。今回の学会が故松﨑会長のメインテーマにありますように,日本の肝臓学の発展に寄与することを期待します。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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