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Topics of HCC

Intermediate stage肝細胞癌治療におけるTACEと分子標的治療薬の役割

黒崎雅之土谷薫泉並木

The Liver Cancer Journal Vol.12 No.1, 28-32, 2020

はじめに
Intermediate stageに至った肝細胞癌(HCC)は再発を繰り返すことから,初回のみならず再発に対する治療も勘案して治療選択しなければならない。すなわち,再発時の肝機能がその後の治療選択肢を規定することを念頭に置き,根治性が高い治療法の選択という視点と,肝予備能を低下させないという視点が必要である。肝動脈化学塞栓療法(TACE)は焼灼療法や肝切除が適応とならないintermediate stageのHCCに対する標準治療であり,適切に選択された症例に対する超選択的TACEは局所制御効果に優れ,肝予備能の低下も少ない。一方で,1st line治療薬としてソラフェニブ,レンバチニブの2種類,ソラフェニブ病勢進行後の2nd line治療薬としてレゴラフェニブ,ラムシルマブが使用可能となったことで,実臨床において分子標的治療薬がintermediate stageに対しても使用される頻度が増えている。Intermediate stageのHCC治療におけるTACEと分子標的治療薬のすみわけのコンセンサスは確立していないが,本稿ではこれまでの報告を整理して概説する。

Intermediate stageに対するTACE:根治性と肝予備能

TACEはintermediate stageのHCCに対する世界的な標準治療であり,特に日本で行われるTACEの技術水準は高く,超選択的TACEにより高率に局所制御が得られる。一方で,超選択的TACEを施行しえない症例も存在する。Intermediate stageに分類されるHCCの腫瘍条件は肝外転移や脈管浸潤がなく腫瘍個数が4個以上,あるいは腫瘍数2,3個で最大腫瘍径が3cm超であるため,その病態はきわめて多彩であり,さまざまな亜分類が提唱されている。初回TACEではcomplete response(CR)を得ることが予後を規定すると報告されていることから1),TACEを施行する際には根治的治療の可否を症例ごとに検討することが肝要となる。Bolondi分類,Kindai分類ではChild-Pughスコアと腫瘍量[最大腫瘍径(cm)+腫瘍個数]のUp-to-7基準を軸としており(表12)3),Kindai分類においてはUp-to-7基準内のB1では根治的TACEが可能であるのに対し,Up-to-7基準外のB2はTACEによる根治治療が困難としている3)。実際,B2ではより早期 にTACE不応になることも示されている4)。Yamakado分類では腫瘍個数4個以内,最大腫瘍径7cm以内がTACE施行後の予後が良好であることが示されている(表15)

BCLC-Bの亜分類

また,TACEを反復したコホートの研究により,TACE後に肝予備能が低下する症例の頻度は,Child-Pugh AからBへの低下が9~14%,ALBI grade1から2への低下が18~21%であることが示された6)。初回TACE導入後に肝機能がChild-Pugh AからBに増悪する寄与因子として,腫瘍量がUp-to-7基準外,アルブミン値,ビリルビン値,PT活性,あるいはALBI gradeなどが報告されている(図14)7)。特に腫瘍量はTACE治療効果と肝予備能の両方に関連することから,Up-to-7基準はTACEと分子標的治療薬のすみわけの一つの目安となる。

Up-to-7基準とTACE後のChild-Pugh AからBへの増悪

このように,最大腫瘍径や腫瘍個数により規定される腫瘍量が一定基準を満たすことが根治的TACEの目安となるが,TACEの効果が期待しにくい腫瘍形態,すなわち被膜がなく微小脈管浸潤を高頻度に認める多結節癒合型,周囲増殖型,塊状型,低分化型肝細胞癌,あるいは小さな播種結節が多発し塞栓領域外にも非顕在化病変がすでに存在する可能性が高い状態なども総合的に勘案して,実臨床においては根治的TACEの可否を症例ごとに個々に検討するべきである。

TACEから分子標的治療薬へのSwitch

TACE不応のHCCに対する選択肢として,1st line,2nd lineを含めて4種類の分子標的治療薬が登場したため,TACE不応の定義は臨床的にますます重要な指標となる。TACE不応と判定された時点で脈管侵襲や遠隔転移がない症例を対象として,TACEを継続した症例とソラフェニブに切り替えた症例を後ろ向きに検討した2つの研究では,いずれもTACE継続群と比較してソラフェニブ切り替え群のほうが予後良好であり,さらに,TACE継続群のほうが肝機能を悪化させることも示された(表28)9)。TACE不応あるいは不適となった症例を対象として,TACE継続とソラフェニブへの切り替えを比較した前向き非ランダム化観察研究のOPTIMIS試験では,臨床背景をプロペンシティでマッチングした比較において,TACE継続62例の生存期間中央値12.1ヵ月と比較して,ソラフェニブへ切り替えた31例では16.2ヵ月であった(OPTIMIS)10)。このように,TACE不応後にソラフェニブに切り替えることで予後が改善するエビデンスは積み重ねられており,肝機能が増悪する前に分子標的治療薬へ切り替えることの妥当性はコンセンサスとなっている。

TACE不応例に対するTACE継続とソラフェニブ移行:生存期間の後ろ向き比較

TACE不適症例に対する分子標的治療薬

ソラフェニブとプラセボを比較したSHARP試験11)においては,肝外転移と主要脈管浸潤のない症例が30%含まれており,生存のハザード比(HR)が0.52(95%CI:0.32-0.85)であった11)。実臨床におけるソラフェニブの前向き試験であるGIDEONの日本人集団のデータでは12),intermediate stageの生存期間中央値は19.5ヵ月,特にChild-Pugh Aであれば20.7ヵ月であった。ソラフェニブに対するレンバチニブの非劣性を検証した第Ⅲ相臨床試験(REFLECT試験)13)では,肝外転移と主要脈管浸潤のない症例が約30%含まれており,生存のHRが0.91(95%CI:0.65-1.28)であり,レンバチニブ群の生存期間中央値は18.5ヵ月であった。ソラフェニブ治療で病勢進行後の2nd line治療薬として,プラセボを対象としたレゴラフェニブの第Ⅲ相臨床試験(RESORCE試験)では,肝外転移と主要脈管浸潤のない症例が約20%含まれており,無増悪生存のHRが0.47(95% CI:0.3-0.73)であった14)。これらの臨床試験成績から,intermediate stageにおいても分子標的治療薬には予後延長効果があると考えられる。
根治的TACEが期待できない症例,例えばUp-to-7基準外の症例に対しては,肝機能が良好なうちにTACEを施行せずに1st line分子標的治療薬を導入し,病勢進行時には2nd line,3rd line治療薬に遂次切り替えてゆくことが4種類の分子標的治療薬を使い切り,予後を改善するポイントと考えられつつあるが,TACEと分子標的治療薬を比較した前向き研究は存在しない。一方,intermediate stage,Up-to-7基準外,Child-Pugh AでTACEあるいはレンバチニブで治療された症例の背景をプロペンシティ・マッチングして比較した研究では,レンバチニブ群のほうが肝機能の増悪が少なく,無増悪生存期間が長く(HR 0.19),生存期間も長い(HR 0.48)ことが示された。同条件下でのレンバチニブ群の生存期間中央値は37.9ヵ月であった15)。今後,大規模な実臨床コホートでの検証が期待される。

TACEと分子標的治療薬の併用

Intermediate stageのHCCは,初回TACE治療後も再発を繰り返し,そのたびにTACEを繰り返すことで肝予備能が徐々に低下する。TACE不応時の分子標的治療薬へのswitchはコンセンサスとなったが,その時点でChild-Pugh Bになっていると分子標的治療薬のよい適応とはならない。TACE後に分子標的治療薬を開始することで,再発を減らし,TACE治療回数を減らして,肝予備能の低下を避ける効果を期待したPost TACE試験では,TACE後12週以内にソラフェニブを開始(中央値9.3ヵ月)したが,無増悪期間は改善しなかった16)。一方,TACTICS試験では,ソラフェニブを2~3週間先行投与してからTACEを施行し,その後もソラフェニブを継続したうえでon demand TACEを施行する群と,TACE単独群を比較した結果,無増悪生存期間が有意に延長し(HR 0.59),またTACE不能となるまでの期間(TTUP)も有意に延長した(HR 0.57)17)。この試験にはUp-to-7基準外が33%含まれており,これらの症例での無増悪生存期間の延長効果はHR 0.48(95%CI:0.24-0.94)であった。理論的に想定される機序としては,分子標的治療薬をTACE前に使用することで腫瘍血管が正常化してTACE治療効果が高まる可能性,TACE後に分子標的治療薬を併用することで虚血によるVEGF産生による腫瘍増悪を抑制する可能性などがあげられる。現時点では解析されていない生存期間延長効果についても期待される。
Up-to-7基準外のintermediate stageのHCC症例に対して分子標的治療薬を導入する症例が増えつつある現状において,分子標的治療薬を逐次的に使用する以外にも,TACEを後治療あるいは追加治療として行う選択肢が出てきたため,次治療に対する考え方も多様化している。例えば,奏効率の高いレンバチニブで治療開始してHCCがUp-to-7基準内にdown stagingすれば,TACEのよい適応になる可能性がある。あるいは分子標的治療薬による治療効果が十分ではなかった場合にも,腫瘍血管の正常化によりUp-to-7基準外であってもTACEの治療効果が高まる可能性がある。前述のプロペンシティ・マッチング研究においては,レンバチニブ導入後にTACEを施行した10例のうち3例にCRが得られており14),また実臨床でも多くの施設から同様の症例が報告されている。レンバチニブを導入したintermediate stageのHCCに対して,TACE追加治療で最大限の効果を得るための条件は,まだ明らかではない。
HCCに対する薬物療法はさらに進歩しており,局所治療後の免疫チェックポイント阻害薬を含むアジュバント療法の臨床試験も進行しつつある。近未来にはintermediate stageのHCC治療戦略は格段に進展する可能性がある。

おわりに

Intermediate stageのHCCにおけるTACEは,局所根治と肝予備能保持の両方の観点からUp-to-7基準内がよい適応である。TACE不応例やUp-to-7基準外では肝機能が増悪する前に分子標的治療薬を導入することで生存期間が延長する。分子標的治療薬を先行投与しTACEをon demandで施行する治療法は,分子標的薬による腫瘍血管の正常化がTACEの治療効果を増強し,TACE後のVEGF産生亢進によるHCC増悪を分子標的治療薬が抑制すると想定され,ロジカルな治療法と考えられる。その有効性を支持するエビデンスが積み重なりつつあり,生存期間が延長する可能性が期待されるが,どのような症例でどのタイミングでon demand TACEを施行するのが最適かを見極めるのが今後の重要課題である。

References

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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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