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沖田賞

受賞者決定

丹尾幸樹山下太郎金子周一

The Liver Cancer Journal Vol.8 No.2, 166-169, 2016

進行肝細胞癌(HCC)に対する抗癌剤・分子標的治療は,いまだ十分な有効性が得られていない。その一因として,抗癌剤抵抗性を有する癌幹細胞の存在が考えられている1)。われわれはこれまで,幹細胞/肝細胞マーカーの発現解析により,HCCにおける悪性性質の解明と分類を行ってきたが,そのうち,EpCAM陽性,AFP陽性HCCサブタイプは,肝幹細胞様の遺伝子発現パターンを有し,5-FUに対する抵抗性を示した2)。さらにわれわれは,EpCAM陽性HCCにおいて,転写因子SALL4の活性化を同定した3)。SALL4は,幹細胞性を制御する遺伝子を活性化する重要な転写因子であるが,NuRD複合体に直接関与することも知られている。SALL4陽性HCCは,NuRD複合体の構成因子であるHDACの高活性を有し,HDAC阻害剤SBHAに感受性を認めた。しかし,SBHA単独投与では,HCC異種移植片マウスモデルにおける腫瘍増殖抑制は不十分であり,EpCAM陽性HCCにおける活性化されたほかの治療標的を検索し,新たな治療法を検討する必要性があった。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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