「目的」進行肝細胞癌の病態は①肉眼的脈管浸潤例,②遠隔転移例,③(TACE抵抗性)両葉多発例など多様であり,その病態に応じた適切な治療戦略を立てることが重要と考えている。われわれは切除不能の肉眼的脈管浸潤を伴う進行肝細胞癌に対し奏効率の高いNew FP療法1)(NFP)による肝動注化学療法(HAIC)を行ってきた。今回は①肉眼的脈管浸潤例に対してNFPとソラフェニブの治療成績を比較しどちらを第一選択にすべきか検討するとともに,NFP後にソラフェニブへの移行が不能になる症例の割合と内容を検討した。
「対象と方法」NFPは2008年4月から2014年3月までに久留米大学病院において124例に導入し,ソラフェニブは2009年7月から2014年3月までにKurume Liver Cancer Study Groupで前向きに254例登録された。今回はこのうち,肉眼的脈管浸潤を認め,遠隔転移を認めない,Child-Pugh(CP) class Aの症例での検討とした。NFP群はソラフェニブ治療歴がない44例,ソラフェニブ群はHAICの治療歴がない20例の計64例を対象とした。