「はじめに」肝細胞癌(HCC)の治療は背景肝予備能と腫瘍因子によって規定することが日本肝癌研究会より提唱された『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』で推奨されており1), 病態に応じて肝切除, 局所療法, 肝動脈塞栓療法, 肝動注療法, 肝移植, 緩和医療などが提示されている. しかしながら, このガイドラインにおいて脈管浸潤や遠隔転移を有する患者に対する定まった治療法は明示されておらず, 有効な治療法の開発は急務である.
「背景」ソラフェニブは抗VEGF作用を有する分子標的薬であり, 腫瘍の血管新生阻害のほか, 腫瘍内の脈管構造, 間質内圧および血管透過性の改善からdrug delivery systemを正常化し殺細胞性薬剤の抗腫瘍効果を増強することが報告されている2). したがって, 血管新生が腫瘍の発生, 増大に関与するといわれるHCCにおいても殺細胞性薬剤と分子標的薬の併用は有効と考えられ, ソラフェニブ単独の治療効果を凌駕する可能性があると思われる.