はじめに  ソラフェニブは,Llovetらによりはじめて肝細胞癌(HCC)に対して有効と報告された分子標的治療薬であり1),2009年5月にわが国でもHCCに対して保険適応になった。わが国におけるソラフェニブによる有害事象は欧米とは明らかに異なり,手足皮膚症候群や肝障害の頻度が高く,減量や休薬,中止の原因にもなっている。一方,欧米では最近本剤によるkeratoacanthoma(KA)や皮膚扁平上皮癌(squamous cell carcinoma;SCC)の合併が6~7%に報告されているが2)-5),わが国では2011年6月現在HCCおよび腎細胞癌合わせて約16,000例に使用されているにもかかわらずいまだ1例の報告もない。今回われわれはソラフェニブ導入半年後にKAを合併したHCCの1例を経験したので報告する。