キーワード ①動注CT  肝結節性病変の血行動態を最も鋭敏かつ客観的に評価可能な検査が動注CTである。動注CTは血管造影時に上腸間膜動脈に挿入したカテーテルから造影剤を注入し,造影剤が腸管を灌流後に門脈を通って肝内に流入してくるタイミングで肝臓のCT撮影を行う経動脈性門脈造影下CT(CT duaring arterial portography;CTAP)と,総肝動脈などに挿入したカテーテルから造影剤を注入しながら肝臓のCT撮影を行う肝動脈造影下CT(CT during hepatic arteriography;CTHA)に大別される。CTAPでは肝内における門脈血流の分布状態が視覚的に評価可能であり,CTHAでは肝内における肝動脈血流の分布状態が視覚的に評価可能である。Single-level dynamic CTHA(SLD-CTHA)とは肝内の腫瘍部分などある1部位にターゲットを絞りテーブル移動を行わずに30秒程度連続的にCTHAを行うもので,病変部への造影剤流入から病変の濃染,造影剤の病変周囲へのドレナージの様子を動的に評価可能な手法である。 ②Budd-Chiari症候群  Budd-Chiari症候群は種々の原因にて肝部下大静脈や肝静脈の狭窄や閉塞が生じることにより肝臓のうっ血が生じる病態である。肝部下大静脈や肝静脈の流出障害により,肝類洞内圧上昇,肝静脈の逆流,肝内・外の側副血行路の発達などがみられ,臨床的には腹水貯留,肝腫大,門脈圧亢進症などを呈する。Budd-Chiari症候群には肝細胞癌が併発しうる。最近の報告ではほかの慢性肝疾患を背景とする肝細胞癌の出現頻度と同様でBudd-Chiari症候群には約4%の頻度で肝細胞癌が出現するとされている1)。また最近の画像診断の進歩に伴い,Budd-Chiari症候群には血行動態異常に伴う多血性過形成結節も出現することが報告されている2)。 ③限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia;FNH)  真の腫瘍性病変ではなく被膜を有さない肝細胞の限局性の過形成からなる結節性病変で,限局性の異常血流に対する反応性変化と考えられている。病理学的には正常肝細胞から構成され,内部に種々の程度にKupffer細胞を有する。造影CT,MRIの動脈相で早期濃染を呈するが平衡相ではwash outを呈さない点が多血性肝細胞癌との鑑別点の1つである。血管造影では中心瘢痕から周囲に向かって車輻状に広がるspoke wheel appearanceが特徴的な所見である。MRI T1,T2強調像では背景肝と等信号を呈する場合が多い。Kupffer細胞の存在を反映して,SPIO造影T2強調MRIでは種々の程度にSPIO取り込みを認める。FNHは正常肝に生じると定義されているため硬変肝に生じた類似の多血性過形成性病変は,FNH-like nodule(FNH様結節)と呼ばれる。 「KEY WORDS」動注CT,Budd-Chiari症候群,限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia;FNH)