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日本肝がん分子標的治療研究会

第3回優秀演題論文集 Session2 ソラフェニブ投与を行ったIGF-2産生性肝細胞癌の1例

奥新和也浅岡良成福田いずみ建石良介佐藤雅哉三神信太郎新野徹内野康志榎奥健一郎後藤絵理子中川勇人近藤祐嗣五藤忠山敷宣代椎名秀一朗吉田晴彦小池和彦

The Liver Cancer Journal Vol.3 No.2, 58-59, 2011

はじめに
 肝細胞癌の傍腫瘍症候群の一つとして低血糖が知られ,その原因としてIGF-2の過剰分泌が報告されている。今回,ソラフェニブを投与したIGF-2産生性肝細胞癌の1例を経験し,特異な内分泌学的異常を呈していたため考察を交えて報告する。

症 例

症 例:77歳,男性。
既往歴:虫垂炎・帯状疱疹。
現病歴:2型糖尿病・本態性高血圧症で近医通院中であったが,以前に肝障害の指摘はなく,画像検査は行われていなかった。2010年2月2日に下血で他院入院しNSAIDsによる多発胃潰瘍と診断された。その際のCTで多発肝腫瘤・両側多発肺結節を認め,画像所見に加えAFP 897ng/mLと高値であったことから肝細胞癌・多発肺転移と診断された。3月2日に当院当科紹介受診し,3月31日よりソラフェニブ800mg/日を内服開始した。4月2日から咳嗽が出現し,4月6日(day7)の外来では胸水貯留を指摘された。4月13日(day14)の外来受診時にK 6.7mEq/L,血糖値27mg/dLと高カリウム血症・低血糖を認め当科入院となった。
治療経過:低血糖に対してブドウ糖液投与で改善を図ったが,血糖値40mg/dL台の低血糖が遷延した。一方で高カリウム血症はブドウ糖液とフロセミドの投与で次第に改善を認めた。低血糖の原因として,ACTH 30.8pg/mL(7.2~63.3),コルチゾール8.3μg/dL(4.0~19.3)と反応性上昇が認められず,低ナトリウム,高カリウム血症を伴っていたことからも相対的な副腎不全が存在すると考えられた。しかし,前医入院時より血糖コントロールが改善していたこと,プレドニゾロン10mg/日と生理的に十分量の副腎皮質ステロイド投与でも低血糖が遷延していたことから,低血糖の主要な原因として進行肝細胞癌による傍腫瘍症候群が疑われた。インスリン2μU/mL(1~11),IGF-1 7.7ng/mL(106~398),GH 0.068ng/mL(0.003~0.971)とこれらの因子に関しては低値を示していた。後日血清IGF-2を測定したところ,大分子量IGF-2が検出され,IGF-2産生性肝細胞癌と判明した。低血糖および高カリウム血症が改善した後,全身状態を考慮しソラフェニブを400mg/日に減量し投与再開した。退院し外来通院を行っていたが5月16日に低血糖による意識障害で再入院,肺転移の進行による呼吸不全のため5月22日永眠された。

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