Summary
癌幹細胞は癌組織の根源とされ,自己複製能,多分化能,腫瘍形成能を有するきわめて特徴的な細胞である。癌幹細胞は抗癌剤や放射線治療に対して耐性を有し,癌の再発の原因となる細胞であると考えられており,そのため,癌幹細胞の治療標的化が癌の根治につながると期待されている。われわれは,肝臓癌において,新規の機能性マーカーCD13を同定し,CD13陽性細胞が癌幹細胞の性質を有する細胞であることを見出し,さらにCD13陽性細胞の生物学的な特徴を検討することで癌幹細胞の治療抵抗性のメカニズムを含めた機能解析を行った。CD13は過酸化物質の排泄を司るグルタチオンパスウェイの酵素としての機能を有しており,細胞内の活性酸素種(ROS)レベルを低く保っている。さらにCD13陽性細胞は細胞周期が静止した状態に主に存在しており,また,多剤耐性を示す分画であるside population(SP)分画と密接に相関し,高い抗癌剤耐性, 放射線耐性能を有している。マウスモデルにおいては,CD13の阻害薬に加えて抗癌剤を投与することにより,非常に高い抗腫瘍効果が認められる。CD13の抑制は癌幹細胞の有する自己複製能を阻害する作用を有し,癌幹細胞標的治療としての有用性が期待される。
全文記事
肝細胞癌の難治機序
癌幹細胞における抗癌剤抵抗性のメカニズム
掲載誌
The Liver Cancer Journal
Vol.3 No.2 22-29,
2011
著者名
金浩敏
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原口 直紹
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石井 秀始
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永野浩昭
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関本貢嗣
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土岐 祐一郎
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森 正樹
記事体裁
特集
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全文記事
疾患領域
消化器
/
癌
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その他
診療科目
消化器内科
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腫瘍内科
/
放射線科
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その他
媒体
The Liver Cancer Journal
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。