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日本肝がん分子標的治療研究会
第2回優秀演題論文集 Session9 Sorafenibのシグナル伝達阻害を介したAnti-EMT効果
掲載誌
The Liver Cancer Journal
Vol.2 No.4 78-79,
2010
著者名
永井知行
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荒尾徳三
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工藤可苗
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工藤 正俊
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西尾 和人
記事体裁
学会レポート
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全文記事
疾患領域
消化器
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癌
診療科目
消化器内科
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腫瘍内科
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消化器外科
媒体
The Liver Cancer Journal
「Sorafenibの現況」Sorafenibは血管新生阻害薬に分類されるマルチキナーゼ阻害薬である. 第III相臨床試験1)2)(SHARP試験, Asia-Pasific試験)において, 対照群と比べて有意な生存期間の延長が認められ, 日本では肝細胞癌において最初に保険適応となった分子標的薬である. Ras-Raf-MAPK経路は膜受容体型チロシンキナーゼの下流に位置し, さまざまな増殖因子の刺激により活性化され, 細胞外の刺激を核に伝達し, 増殖・分化などを誘導する. 肝細胞癌で, 非癌部と比較した癌部におけるMAPKの過剰発現や活性上昇が報告されており5), 細胞株を用いたin vitroの実験では, MAPKシグナルの活性化が細胞間接着の減弱や細胞運動能の亢進など癌の浸潤転移に関与している可能性も示唆されている6). また, in vivoでもMAPKの過剰発現が転移を促進するという報告もある7). 一方, 最近, 癌細胞の悪性度および転移に関連すると考えられている上皮間葉移行(Epithelial Mesenchymal Transition, 以下EMT)が注目されている.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。