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国際悪性リンパ腫学会議(ICML)

11th International Conference on Malignant Lymphoma

2011年6月15日~18日 於 スイス・ルガノ

鈴木律朗

Trends in Hematological Malignancies Vol.3 No.3, 44-45, 2011

はじめに
 2011年6月15日から18日まで,スイスのルガノでICML-11が開催された。この会議はこれまで3年に1回開かれる国際会議で,「リンパ腫のワールドカップ」とも呼ばれており,世界中の著名なリンパ腫研究者が一堂に会する一大イベントである。悪性リンパ腫の基礎医学および臨床医学に関する3年間の進歩は,この会議に参加すればほぼ網羅でき,4日間文字どおりリンパ腫漬けの毎日を送ることになる。第1回の1981年の会議の参加者はわずか100名ほどであったが,会の規模と参加者は年々増加の一途をたどり,今回は3,020名の事前登録参加者が76ヵ国から訪れたことがアナウンスされていた。
 ICMLでは毎回,応募演題の10%が口演,20%がポスター発表となる狭き門であることがアナウンスされている。筆者は1999年以来今回で5回目の参加となるが,ICMLとは相性がよいのか演題は3度目の口演として採択された。参加者の増加に対応すべく,今回はいつものパラッツォ・ディ・コングレッシに加え,ルガノ大学と近くの映画館が会場になった。筆者の口演会場はルガノ大学であった。

リンパ腫の基礎研究のトピックス

 今回のICMLにおけるリンパ腫の基礎研究で最も目を引いたのは,最近の遺伝子研究の進歩による成果であった。カナダのブリティッシュコロンビアがんセンターのRandy Gascoyneは,RNAのrandom sequenceという手法を用いてホジキンリンパ腫でCIITAという遺伝子がrecurrentに転座していることを見出した。転座相手はBX 648577, CD273, CD274, RUNDC2A, RALGDSなど多岐にわたるが,この転座はホジキンリンパ腫で発見された初めての遺伝子転座である。またホジキンリンパ腫では15%で転座を認めるが,縦隔大細胞型B細胞リンパ腫の38%,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の3%にも同じCIITA遺伝子の転座を認めており,これらのリンパ腫に共通する増腫瘍メカニズムの存在が示唆された。
 米国コロンビア大学のRiccardo Dalla-Faveraは,これまでのリンパ腫研究に関する業績が認められて,ICMLの最高賞であるSan Salvatore Foundation Awardを受賞した。その記念講演であるHenry Kaplan Memorial Lectureで彼はこれまでの研究成果とともに,最近の発見であるCREBBP, EP300といったメチルトランスフェラーゼ遺伝子の点突然変異を報告した。先述のGascoyneもMLL2, EZH2, MEF2といった遺伝子の点突然変異を報告しており,メチルトランスフェラーゼとリンパ腫発症の関連が今後の重要なテーマになると考えられる。

リンパ腫の臨床研究のトピックス

 今回のICMLでのキーワードは,PET,自家移植,新薬である。PETに関しては実臨床で幅広く用いられているが,ICML前日のclosed workshopで病期診断(staging)におけるPETの使用に関してはデータが不十分であるため時期尚早であるとされた。PETを含めた場合と含めない場合のstagingで,本当に差が出るのかのデータ収集から行うべきであるという結論になり,次回のICMLまでに欧米の主要な研究施設・センターからは報告が揃うことになるであろう。治療を続けるべきか否かの判断に用いるinterim PETについてはICMLでもワークショップが組まれたが,ホジキンリンパ腫では一定のエビデンスがあるがDLBCLではエビデンス不十分で,まだ実臨床で用いるレベルではないとされた。雰囲気だけで先行しているリンパ腫診療の現状に冷や水を浴びせるような警鐘で,新鮮であると同時に欧米人のpracticalなものの考え方に感心した。
 自家移植に関しては,ICMLの直前にあった米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告されたSWOG(Southwest Oncology Group)のS9704 studyの結果がICMLでも紹介された。DLBCLをはじめとするaggressive lymphomaの初回治療ではInternational Prognostic Index(IPI)highおよびhigh-intermediateリスクの患者ではup-frontの自家移植を行うべきであるという結論になったが,サブグループ解析で差が出たのはhighリスク群のみであった。この結果の解釈には議論があるところである。また,筆者の報告を含め多くのリンパ腫のサブタイプで,自家移植の同種移植に対する優位性が報告されたが,同種移植を受けた群では背景因子が有意に予後不良であることが多く,解析時の補正が必須である。こうした生物統計学的な解析の知識は,臨床家にとって今後必須のものになると考えられた。
 新薬に関しては,多くの分子標的薬が臨床開発の段階に入ってきている。今回のICMLで臨床試験の結果が報告されたものだけでも,トキシン結合型CD30抗体,抗CCR4抗体,抗PD-1抗体,BCL2阻害薬(BH3 mimic),オーロラキナーゼ阻害薬,BTK(Bruton tyrosine kinase)阻害薬,PIMキナーゼ阻害薬,MEK阻害薬,JAK2阻害薬,PI3キナーゼγ阻害薬と多岐にわたる。これらのうちいくつが薬剤として承認に至るかはわからないが,トキシン結合型CD30抗体と抗CCR4抗体は承認目前の段階にある。開発中のものでは,筆者はPI3キナーゼγ阻害薬が有望であると見たが,さて如何なることになるであろうか。

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