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Around Hematological Malignancies

JAK2阻害薬

北中明下田和哉

Trends in Hematological Malignancies Vol.3 No.3, 39-41, 2011

JAK2と骨髄増殖性腫瘍
 JAKは,血液細胞の増殖,分化を調節するサイトカインの細胞内シグナル伝達に必須のチロシンキナーゼである。

JAK2と骨髄増殖性腫瘍(続き)

たとえば,エリスロポエチン(EPO)が細胞表面上のレセプターに結合すると,レセプターと会合しているJAK2が特異的に活性化される(図1A)。

活性化されたJAK2はサイトカインレセプターのチロシン残基をリン酸化し,それを認識して細胞質内に存在するSTAT5がレセプター近傍に集簇する。STAT5はJAK2によりリン酸化されると核に移行し,サイトカイン依存性の転写が開始される。EPOによるJAK2の活性化が赤血球造血を調節していることは,EPOやEPOレセプター,あるいはJAK2を欠損したマウスでは赤血球造血が阻害され,胎生致死になることからも明らかである。
 真性赤血球増加症(polycythemia vera ; PV)の95%以上,本態性血小板血症(essential thrombocythemia ; ET),原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis ; PMF)の約半数に,JAK2の変異がみられる。正常造血においてサイトカイン刺激により一過性に生じるJAK2の活性化は,JAK2に変異が生じるとサイトカインの刺激がなくとも恒常的に生じるようになり,造血細胞は自律増殖し,PV,ET,PMFの発症要因となる(図1B)。BCR-ABLの形成により生じる慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia ; CML)の治療戦略がABLチロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブ,ダサチニブ,ニロチニブの登場により一変したのと同様に,JAK2変異が高率に存在する骨髄増殖性腫瘍に対するJAK2阻害薬の効果に期待が集まっている。骨髄線維症(PMFと,PV,ETに続発する二次性骨髄線維症)と,ハイリスクのPV,ETを対象とした臨床試験が行われている。

骨髄線維症に対するJAK2阻害薬の臨床効果

 表1に,骨髄線維症を対象とした現在進行中のJAK2阻害薬の臨床試験をまとめる。

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